Hisakazu Hirabayashi * Official BlogニンテンドーDSi

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ニンテンドーDSiの発売日、3連休の初日で土曜日。
「何か書け!」とは書いてませんが、ようはそういうリクエストのメールが多い。
自分でこれだけ書いていて、言うのもなんですが、注目されているんだ、ニンテンドーDSi。

あまのじゃく。漢字で書くと、天の邪鬼。
惚れ惚れするほど天気が良いので、オフィスから見える恵比寿プライムスクウェアと東京タワーのてっぺんを望遠で撮ってみました。

こんな様子で、こんな様子のようです。

上の記事、取材の最後に、一般の人になにか聞いて、ひとこと言って、文章、締めてますよね。
これ、業界用語では“生コメ”って言います。

生のコメントだから。


デスク「ちゃんと“生コメ”も入れて置けよ」
新人記者「はい、家族連れの“生コメ”でいく予定です」

もう、だいたいできあがった記事に現実感を持たせるために、あるようなもの。
で、何が言いたいかというと、最近は、ほんとに教育ができていない記者が多くて、「“生コメ”ください」って、私の携帯電話にかけてくる記者が多いこと。ついさきほど、一本そういう電話が入り、怒ってもしかたないので、気を落ち着かせて、空の写真を撮りました。

“生コメ”
は下品な業界隠語で、社外の人に使う言葉じゃないですよ。


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……と言いつつも現場に行ってみると

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もう、現場には行かないと言いながらも、なぜか早起き。
えいや、行ってしまえと渋谷の街に行ってみると、ニンテンドーDSiを当日販売してるビックカメラ渋谷東口では、開店前から大行列が。4階の売り場までつながっていました。

ああ、今日は良い天気です。


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天地創造だけど、ソフト3本付きで¥36,040

昨日のエントリーと私の記事について、いろいろな方からメールをいただいております。

わかりやすい。
わかりにくい。
いかにもありそう。
そんなことはないだろう。
おもしろい。
つまんない。
真実性がある。
ウソっぽい。

……はっきりと、そう書いてはいませんが、まあ、たくさんの感想や一言コメントをいただきました。

なかでもchance encountと考える。
我が社にとってチャンス到来、と考える人は優秀ですね。
いただくメールの文面に、その感じがにじみ出ています。

Wiiのコントローラは電池がなくなると使いにくい……なんて、何の関係もないことを書いてくる人とは違いを感じますね(笑)

ま、いいです。
ニンテンドーDSiは、もうすぐ発売され、しばらく行列ができたのできないの、というお決まりの話題が満ちるのでしょう。

でも、私はもう、別世界に行っています。
昨日のコメント欄にも書かせていただきました。

業界再編。
地殻変動。
合従連衡。

という手垢がつきまくった四字熟語を絶対に使いたくなくて、天地創造と言い放ちたかった。
ゲームビジネスは、ハードではない。ソフトでもない。企業でもない。
産業そのものをクリエイティブする時代に入ろうとしています。

まあ、昔、金丸信という政治家は「ガラガラポン」と表現したわけですが、それだとオモチャの名前みたいだから、しばらく、そう言おう。天地創造。

そんなことを考えていたら、おかげさまで、天地創造をタイトルにした講演が12月にできることになりました。

ある企業から、いきなり「天地創造」というご案内が届いた、特定の職種の方がいらっしゃるかと思いますが、ご期待ください。

話は一気にセコクなりますが、(DSソフト3本付)はまずいでしょう。
古典的な抱き合わせ商法です。
著者=出品者(?)を「不明」として、逃げてますが。


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アップルと任天堂。買収や合併はないけど提携はあるかも……

なぜ、今週、アップル社のことをたくさん書いていたのか?
じつは、伏線がありました。

グローバルで、マクロな視点で見ると、最近、こんな記事や、こんな記事が、飛び交っております。

ニンテンドーDSiが発表されたのは、10月2日でしたが、その後、海外(アメリカ・ヨーロッパの証券アナリスト)の方から、アップルは任天堂を買収するのか? といった過激な質問を受けることが何度かありました。

任天堂はアップルをリスペクトし、アップルは任天堂をリスペクトしています。
金融マンではなく、モノづくりをする人が、ともに経営者をやっている企業同士ですから、まず間違いなく、買収や合併はないでしょう。

けれども、そんな憶測が生まれるのも、無理からぬ話です。「Nokia社とSamsung社に次ぐ、世界第3位の携帯メーカーになった」とiphoneを手に高らかに宣言するS・ジョブス(CEO)、さらに「250億ドルが銀行に安全に」おさまっており、負債はゼロ」とアップルのキャッシュリッチぶりを、最近、誇示しました。

サブプライムローン問題、リーマン・ショックはあくまでも目先の出来事。
iPodを軸にした、製品戦略と新しいビジネスモデルが立ち上がった04年から今日にいたるまでのアップルの株価を見ると、下写真の通りの上げ潮に乗っているのです。

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*クリックすると拡大されます

ミクロな視点で見ると、もうすぐ発売されるニンテンドーDSi。
任天堂カンファレンス 2008.秋の社長講演の動画とテキストでも語られているように、「サウンドデータをAACフォーマット」とあえて、岩田社長は音楽データの圧縮形式の説明をなさっているのです。

これは岩田社長独特の温厚な語り口の裏で、マイクロソフトのWindows Media Audio(wma)のデータなんか、ニンテンドーDSiでは、絶対に聞けないようにしてやる! の宣言とも受けとることができます。

つまり、ニンテンドーDSiの仕様は、任天堂という企業がアップルとの関係が良好であることを示唆したものであり、その他、いろいろな将来展望が背後に隠されている。そんなことが、解読できるマシンでもあります。

本日、nikkeiBPnet on Yahoo!ニュースに私の寄稿がアップされました。

10月2日以降、速報と無難なストレートニュースばかりの報道に辟易としていたところ、執筆のご機会をいただいたので、かなり私の意志と見解が込められた原稿になっております。

よろしかったら、ご覧ください。


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任天堂……宮本茂という天才は天才ではないと自覚できる天才

『スーパーマリオブラザーズ』『ゼルダの伝説』の作者――という呼び名は不正確ですが、あえてそう呼ばせていただきます――である宮本茂(現・任天堂/専務取締役)さんは、私がテレビゲームに関する多くのことを学ばせていただいた方です。

岩田社長、同様、おつきあいの期間は長いです。
初めて電話でお話したのは、1986年2月のこと。
当時、社会人一年生。
駆け出しの編集者だった私は、実績がない、無名である、どころか「無」のような新人君でした。

たまたま、『ゼルダの伝説』(ディスクシステム版)について、電話で話をする機会があって、当時の宮本さんは、30歳代前半の任天堂・情報開発部の係長さんでした。

「新人」と「係長」の会話で鮮烈に覚えていること。
宮本さんの口調の第一印象は、とても柔和。
しかし、主張すべきを主張する“押し”の強さもすごくて……でもそれは、強引な自己主張ではなく、なにかへの「愛情」や「情熱」や「芯の強さ」に支えられた“押し”であり、嫌な気分どころか、すがすがしい気分になった記憶があります。その会話の内容は、とある交渉事だったのだったのですが、私は、あっさりと全面降伏しています。

現代風に言うと、宮本さんはアサーティブなコミュニケーションの達人ということでしょうか。

お人柄だけではない、もちろん数々の作品――という呼び名は不正確ですが、あえてそう呼ばせていただきます――を遊び、私は心底から宮本茂という人物を尊敬するようになりました。

「新人」と「係長」が、「入社4年生」と「課長」になった頃でしたか。
同じく雑誌のインタビューで、宮本さんに「天才」という呼びかけをしたら、ものすごく丁寧に、その私の考えをたしなめられたことも記憶に残っています。



質問者○…「あなたは天才ですね」。
回答者○…「いえいえ、それほどではありません。周囲の皆さんのおかげです」。




これはよくあるインタビューのカタチですが、一種の日本文化、世界共通の文化なのでしょうか。
「私は天才だ!」と言いふらしていた、サルバトーレ・ダリなどは例外で(笑)、えてして天才は自分のことを天才と呼ばないものです。

ですから、当時の宮本さんも、そのたぐいの照れ隠しや謙遜をなさっているのかと思いました。
しかし、よくよくお話をうかがうに、そんなケチくさい照れ隠しや謙遜をしているのではない。
私のモノの見方を、考え方を、やさしく、わかりやすく、まさに、さとしてくださったのです。

「ゲームクリエイターとしてみたら、私(=宮本茂)より才能のある人は、たくさんいます。ですが、私は任天堂という大きな会社で、他社の人より大きな予算をもらい、長時間の開発期間が与えられ、優秀なスタッフに囲まれている。しかも、同じ会社でハードウェアも開発しているので、その性能や特徴の情報が、誰よりも早く知ることができ、ときにハードウェア設計者に、『こうしてほしい』とリクエストすることさえできる。つまり、私個人が天才なのではなく、私の置かれた働く環境が良好なのです」

「平林くんのように、メディアの仕事している人間は、私を天才と持ち上げるのではなく、私以外の人の環境、その環境を良くすることに力をさくべきなのです」


……という意味のことを、もうちょっと穏やかな京都弁で言ってくださいました。

ただの形式的なインタビューの答えではない、業界全体を俯瞰したうえでの自己のポジションの認識。そこから発展して、メディア人の果たす役割についての、ご忠告をいただいたのです。

今、私はゲーム会社、その他の業種を含めて、モチベーション・オリエンテッド・カンパニーなどと呼んでますが、まさに、組織環境を良くするためには、どうしたらいいか? そんなことばかり考える人間になっています。

その境地にたどり着くまでの遠因に、「私は天才にあらず、成果は働く環境がもたらす」という宮本さんのお言葉があった、と自覚しています。

ここで、改めて御礼を述べたいと思います。
ありがとうございました。

昨日拝見した、『Wii Music』は良かったです。幼稚園の子どもたちが、本当に楽しそうでしたね。日本と世界の音楽の“環境”が、まさに宮本さんのお力によって変わるでしょう。ゲームソフトの売上ではなく、10年先、20年先の子どもたちが、どんな音楽の作り手になるのかが、楽しみになって、昨日はバカみたいでしょう、会見を見ながら、私、目頭を熱くしておりました。

ものすごい実績ある方が、自由に決裁権を持って、念願の……自分の好きなことを作品にして、俗に言う大コケをする例を……悲しいかな、私はいっぱい見てきました。かくいう、私だって「好き」が「失敗」につながって、深刻に悩んだ時期もあります。

でも、宮本さんと『Wii Music』の関係は違う。
宮本さんは大の音楽好きです。

確か、学生時代からブルーグラス(Bluegrass music)のバンド活動をし、弦楽器がお好きでした。普通のギターだけではなく、バンジョーもお弾きになられたかと記憶しています。

そうです。金沢市主催のトークイベントでご一緒させていただいた際、マジメそうなお役人様たちとの食事会のあとの2次会で、私は宮本さんの生演奏……というのを聴かせてもらったこともあります。宮本さんの音楽好き、演奏好き……は筋金入りです。

「好き」を「作品」にするのは諸刃の剣です。

昨日のプレゼンテーションでは、音楽の専門用語がバンバン出ていましたが、『Wii Music』という作品は、つくり手の思い入れが見事に抑制されていて、生意気ながら、宮本さんご自身の心のコントロールが大成功した、また新しいタイプの功績を拝見できたな、と思いました。

『Wii Music』は、宮本さんにとって過去に手がけられたどのタイトルよりも「好き」なんだろうな、とも思いました。

宮本さん、もし無人島に自分がつくったゲーム一本持って行くとしたら、『スーパーマリオブラザーズ』でも、『ゼルダの伝説』でもなく『Wii Music』を持って行く気がします。

Wii Music





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