任天堂……正午の太陽のような眩しさ、そして次にあるもの
やはり、私は生涯、ゲームアナリストなのでしょうか。
新製品の発表会の空気を吸いますと、いろんな考えが浮かびますし、外部の方の期待も頂戴しています。アクセス数と「早く書け~」のメールがすごい(笑)。
本当は、今日ゲスト参加させていただいたバンダイ・ナムコホールディング社の素晴らしい内定者研修、私が本日、講師をさせていただくキャリア開発トレーニングの話を書きたかったのですが、火がついたので、ニンテンドーDSiなどについて、再び雑感などを。では、いきましょう。
●ニンテンドーDSiは、このエントリーで事前に予想した通りの製品仕様だった。Nintendo Zoneと名づけ、情報発信拠点を増やそうとし、その先駆けとして、マクドナルドと提携するところの読みまでドンピシャ! 私が凄いのではなく、任天堂はニンテンドーDSをきわめて戦略的な思考で、正常進化の道を歩まそうとしているので、先が読みやすいだけなのです。よって、ニンテンドーDSiというマシンの性能や発表に、サプライズは何もなし。

マクドナルドはニンテンドーDSiの情報発信地に
●ただ、まったく予想がはずれたのは、11月1日発売。こんなに早く出すとは予想していなかった。早くて年末商戦が本格的にはじまる11月最終週、遅ければ来春の可能性があるとも。現在のニンテンドーDSが売れていないわけではありません。普通ならば、年末シーズンの需要をこなしてから、新機種追加で十分でしょう。
●私が読み違ったのは、任天堂は意外とソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプレイステーション・ポータブル(PSP)の存在を気にしている、ということ。普及総数ではニンテンドーDSがぶっちぎり……過去最速のペースで最多の売上を示している携帯ゲーム機です。

赤線のニンテンドーDSのほうが短期間で2000万台を突破
●だが、日本国内、今年に限っては違っていて、私の把握しているデータでは、2008年の1月から8月までニンテンドーDSはPSPに負けっぱなしの8連敗。9月は『ポケットモンスター プラチナ』が出たのでニンテンドーDSが勝ち。でも、年内の負け越しは決定的。しかも、SCEはPSPの新モデルとしてさらなる高画質化を実現し、マイクを標準搭載したプレイステーション・ポータブル(PSP-3000)を、10月16日に発売予定。そこで、ニンテンドーDSiは当初計画よりも早まったのではないかと、うがった見方もできるわけで。

ニンテンドーDSの伸びが鈍化しているのは確か
●以上は事実とデータからの分析ですが、これからはもう直感的のみの雑感です。
●ニンテンドーDSi。製品仕様や投入時期が、革新的(イノベーティブ)なわりに、どこか凡庸な保守的(コンサバティブ)な雰囲気がしました。(1)「私」だから「i」。もうアップル社が10年以上前にやったネーミングを後追いしていること。(2)その「i」に負い目を感じているかのように控えめな、製品そのものの「インダストリアルデザイン」と、商品「ロゴデザイン」。(3)さらに、カラーリングも白と黒という最も無難な色選びをしたこと。ニンテンドーDSiは間違いなく売れる。しかし、革新的の母から生まれ、保守的な父に育てられた……人によっては「バランスが良い」と言うのかもしれませんが、私は「アンバランス」を感じた。
●さらに、Wiiをさらに普及させるため、インターネット接続ユーザーを増やすキャンペーンや、新ソフトの投入など、どの策も眩しいほどに的確なのですが、その眩しさは「正午の太陽」の眩しさに相通じるものを感じるのです。つまり、カンファレンスに参加して、脳天をぶち抜かれるが如く、時計の針を逆まわりさせられて、もう一度、「夜明けがやってくるぞー」という衝撃はなかった。
ま、そんなところでしょうか。
ただし、だから今後、任天堂は凋落する……と短絡的に見ているわけではありません。
単に現行機、ニンテンドーDSシリーズ、Wiiの普及のピークはいずれやってきます。
それだけは確実に見えたかな、という当たり前の話です。
その先。
もっと、その先の任天堂。
たった今、信頼すべき業界の大物と話をしてたのですが、ふたりの間で任天堂はいずれ、ゲーム離れする、で見解は一致しました。
「ゲームじゃない」。
コンピュータ・エンタテインメントだ。
映画を凌ぐんだ、ゲームよ。
そんなベクトルを示したのが、PLAYSTATION3とXbox360だとしたら、任天堂の「ゲームじゃない」はライフ・エンタテインメントをきっと目指す。
生活をエンタテインメントにする。
うーん、比喩がヘンですが、生活・家族に密着した白物家電的な必需性を、デジタル家電的な技術で達成するとでも申しましょうか。
大まじめに書きますが、食品を冷蔵することが楽しい、洗濯が楽しい、エコロジーを考えて節電が楽しい。ありえる話です。脳を鍛え、料理で遊び、ダイエットを楽しむと、数年前にあなたは想像してましたか?
世にも珍しい21世紀型の生活エンタテインメント企業になるとしたら、そりゃもう、「正午の太陽」は失礼な話で、任天堂という企業には、向こう10年間、夜明けは何度も訪れるでしょう。
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