挫折なき天才は体験を創造する
人はどこかで挫折する。
事業が失敗するとか、しないとか、そういう明らかな挫折ではなく。
「このままでいいの?」という自己懐疑とでもいいましょうか。
どこかで人は壁にぶつかるものです。
そんなことの、あれやこれやについて書いています。
実業家よりも、ものをつくるナイーブな作家は、とりわけ、壁にぶつかりやすいものです。
ピカソでさえ。
ビートルズでさえ。
スティーブン・スピルバーグでさえ。
夏目漱石でさえ。
谷崎潤一郎でさえ。
川端康成でさえ。
壁にぶつかりました。
モデルチェンジをするべきか、しないで自分の流儀を貫くべきか?
悶々とした日々を過ごして、さらに功を成したり、酷評を浴びることになったりして、それぞれのセカンドステップ、サードステップを歩んでいきます。
桜井政博さんという、著名なゲームクリエイターが、任天堂と
新会社を設立しました。
じつは、桜井政博さんは、いつも桜井君って呼ばせてもらっているので、そうさせていただいて桜井君は、なんと彼が19歳の頃からの知り合いで、私自身、ゲームのたくさんのことを彼から教わりました。
はじめて彼と触れあったのは、企画書を通じてでした。
彼の書いた企画書には、なにやらオーラがあって『はるかぜポポポ』というタイトルが、私はいたく気に入りました。それが、なんとのちに『星のカービィ』になって大ヒット作になってくれた、という思い出もあります。
そう、話を戻すと挫折です。
桜井君は、人の見えないところで本当に努力をしていることを知っています。
ストイックです。
プロフェッショナル魂のかたまりのようです。
そして妥協しない。
だから、もの凄い苦労をなさっているのはわかるのですが、それは、ここでいうところの挫折ではありません。楽しい努力です。努力を楽しんでいます。
だから、自己懐疑をしない。
悶々とせずに、しなやかに時代に自分を楽しんで進化させられるタイプなのです。
そう、ピカソ、ビートルズ、スピルバーグ、夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成というよりは、長嶋茂雄、王貞治、イチローのような雰囲気をかもし出しています。
昔、桜井君に言ったことがあるんだけど、覚えてくれてますでしょうか。
「桜井君は人間国宝っぽいよね」。
彼は天才です。
さて、新しいプロジェクトでは何をおやりになるのでしょう?
(岩田)
桜井さんにとっても、任天堂にとっても初めての試みですね。
スマブラではない特命案件を私はお願いしたということです。
(桜井)
今は内容を明かせないけど何かを作りますよ、としか言えないですね。いろいろな人がいろいろなものを作っている中で、とても特殊なプロジェクトが立ち上がった。売上がどうなるか、受け入れられるのかどうかもわからないものだけど、1本のゲームを作る目的だけでなく、今までとは違う体験ができる、というのは約束できます。
任天堂・岩田社長と対談なさっていて、上記の箇所がポイントとかと思いますが、全体を通じて「ゲーム」という語は頻出するのに、「テレビゲーム」「ゲームソフト」という語が出てこないのが特徴的だな、と思いました。
あと、単なる言葉の綾かもしれませんが、「今までとは違う体験ができる」というは、いつもの桜井君らしくない言い回しなんです。
ここに、このプロジェクトの意義が隠れている気がします。
ソフトをつくるのではないのです。
ユーザー・エクスペアレンスをクリエイトするのです。
遊ぶ人の体験をつくるのでしょう、きっと。
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