Hisakazu Hirabayashi * Official Blogアート

パリ、シャンゼリゼ通り添いのレストランで

ゲームクリエイターの飯田和敏さんは、私に西洋美術史に興味を持たせてくれた師匠のような存在です。

ことの経緯を説明すると長くなるので割愛すると、私と飯田氏はある日、パリのシャンゼリゼ通り添いのレストランで食事をすることになりました。

そのレストランは、なぜか飾ってある絵が、ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)というイタリアの画家の絵ばかりで、魚、野菜、木、果物などを使って肖像画を描く変わった画家で、彼の生い立ちや、歴史的な意味を食事を楽しみながら教わりました。

まあ、下の映像を見ていただければわかるように、インパクトがある絵で、ある種のエンタテインメント性もあって、私の大好きな画家のひとりになりました。

そして、このジュゼッペ・アルチンボルドの発想は、コンピュータが発達した今、テレビゲームでもCG映画でも、TVコマーシャルでも、いろいろと応用ができるのではないかと、機会があるごとに学生さんや若きクリエイターに紹介してきました。

どうですか?
気持ち悪い、という人もいますが、今の時代、再評価されてほしい画家、貴重な才能を持った画家だと私は思うのです。





アルチンボルド (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)アルチンボルド (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)
(2001/06/13)
ヴェルナー・クリ-ゲスコルテ

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ゴッホと浮世絵

下記の事情により、話は飛びまして、ゴッホです。
フィンセント・ファン・ゴッホです。
オランダで生まれ、フランスで活躍したゴッホは、日本の浮世絵を愛好し、模写もしていました。
浮世絵は多色刷りの版画ですが、ゴッホは油絵で描いていたんですね。
特に歌川広重を愛好していたようで、ゴッホの愛した歌川派(浮世絵)美術館という美術館もあったほどです。同美術館は残念ながら閉館してしまったのですが、サイトにある「タンギー親爺の肖像画」の解説はわかりやすいです。
他にもこんな作品こんな作品が現存しています。

ゴッホと歌川広重の関係を動画したショートムービーも発見しました。



そういえば、ゴッホの代表作『医師ガシェの肖像』を100億円超で落札したD製紙の会長が「死んだら棺おけに一緒に入れて焼いてくれ」と発言したとかで、顰蹙をかったことがありましたね。下に紹介させていただきました、西岡文彦の本はとてもわかりやすいです。

二時間のゴッホ―名画がわかる、天才が見える二時間のゴッホ―名画がわかる、天才が見える
(1995/12)
西岡 文彦

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計算でつくる映像

コンピュータが登場したとき、そこに絵を描くのは「点」を延々と打ち込むことと同義で、そうではなく、ひとまとまりの「塊(オブジェクト)」を描く方法が生まれました。

しかし、表現者と観る者の欲は深く、その画像をもっときれいにするためには「描き込む」という、再び人間の作業量の戦いとなりました。

それから、3DリアルタイムCGなどと呼びますが、あらかじめ造形物をつくっておき、その動作パターンをコンピュータが制御する方法が生まれました。ですが、その映像をもっときれいにするためには、また訓練されたデザイナーの手作業が介入することにもなりました。

で、今、もう一度、CGをデザイナーの手によるものではなく、プログラムが計算で絵をつくる流れへと傾きつつあります。以下は、映像=コンピュータ・グラフィックスを、人間の手でつくるのではなく、計算でつくろうとしている、いくつかの例です。

専門家の方はNaturalMotionのサイトのデモンストレーションをご覧になることをおすすめします。








Googleの粋なはからい……ルネ・マグリット、生誕110年

お気づきの方も多いでしょう。
Googleのトップページのロゴが、ルネ・マグリットです。

生誕110年。11月21日生まれで、今日はアメリカ時間では誕生日。
そんな理由から、彼の作品を選んだのでしょう。粋な選択です。

ルネ・マグリット。ロゴをクリックしてリンクをたどっていくと、あちらこちらに「シュルレアリスムを代表する画家」と書かれています。

ですが、私の個人的見解としては、ルネ・マグリットをダリのようなシュルレアリストととらえていないんです。

シュルレアリスム=超現実。
現実+現実が重なって、非現実的に見える。
たとえば……
「溶ける」という現実。
「時計」という現実。
ともに現実ですね。
ですが、それを同時にしてしまって、重ねてしまって、「溶ける時計」を描くダリは、超現実主義の王道を行く画家と私は解釈します。

でも、ルネ・マグリットは超現実の世界に飛ばないで、現実の世界に足をつけています。
たとえば、白紙委任状と題された、この絵。(「はてなキーワード」より転用させていただきました)

hakushi.jpg


現実世界で人間が感じる、「見る」という行為のおぼろげなさ。
あるいは、「ある」と「見る」の関係はどういうものか。


「ここにある一つの寝椅子は、横から見たり、前から見たり、あるいは他の方向から見ることによって、それ自体と異なるものに見えるということがあるのだろうか?」

「むしろ、違うように見えるけれども、まったく違わないのではないだろうか。そしてこれは他のものについても同様ではないだろうか?」

……と、プラトンは言っていますが、ルネ・マグリットも同様で、彼の作品は「ある」と「見る」の関係、言い換えると「脳の判断」と「目の判断」の関係を、生涯にわたって問い続けたような画家であると解釈しています。

私は見えないモノを見るのが好きな人です。

だから、ルネ・マグリットが大好きで、そのルネ・マグリットを私が見ると、超現実ではない。
現実に地が足が着いた、とても人間的な画家だと思うのですね。


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錯視、作詞でも策士でも佐久市でもなく錯視

昨日、学生さんたちに映像についてあれやこれや、の話をしました。

厳密にいうと、世の中に「映像」なんてものはなくて、「静止画の連続」を、たまたま「映像」と呼んでいる。

それは、“仮現運動”といって、静止している対象を短い時間間隔で位置を変えながら連続して提示すると、あたかも本当に動いているかのように見える。

つまり、人間の目なんて、見ているようで見ていない、騙されやすいのである、と言いたかったのです。こんな話をする際に、いつも使わせていただいているのが、立命館大学・文学部人文学科心理学専攻の北岡明佳教授のホームページ。北岡先生は錯視の専門学者であり、我が国随一の錯視画像クリエイター(?)であります。

下の画像(サムネール)をクリックしてください。
これは動画ではありません、静止画です。
本当です。

rotsnake.gif


人はなぜ錯視にだまされるのか?人はなぜ錯視にだまされるのか?
(2008/07/22)
北岡明佳

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