Hisakazu Hirabayashi * Official Blog2009年02月

不良の顔した優等生-『龍が如く3』

『龍が如く3』が発売されました。
本当はいろいろとやらなくてはいけないことが多いのですが、今度の土日は相当遊んでしまいそうです。

「どういうゲームソフトが好きなんですか?」とは、過去に何度となく訊かれた質問。
個別タイトルではたくさんありすぎて答えられないので、その傾向をズバリ言うと、終わらないゲーム、が好きです。

ゲームスタートがあって、エンディングがあって、ハイ、終了!
……という「解くための、終わらせるための」遊びは、なんか寂しい。

映画は2時間、観ると終わります。
演劇も、小説も。

だけれでも、せっかくコンピュータという装置を使った遊びなのだから、終わらない遊びをつくることが可能で、厳密に言えば、一応節目としてのエンディングはあるのだけど、その後も手放すことなく、遊べる要素を残しておくことができるのです。

このコンピュータだからこそ、終わらせない……に挑んだ痕跡が見えるゲームが好きです。
『龍が如く3』には、その心意気があります。
ヤクザ者の主人公が、ゴルフ、麻雀、ダーツ、キャバクラで遊び放題(トレーラー参照)などと言われると、おふざけかと思うかもしれませんが、トンデモナイ!

エンタテインメントに「正しい-正しくない」の評価は、つけるべきではありませんが、メディア論。
メディア論としてのテレビゲームとして見ると、外見にごまかされてはいけません、あらまー、ビックリ、優等生のなかの優等生が『龍が如く3』なのかなと思うのであります。

龍が如く3龍が如く3
(2009/02/26)
PLAYSTATION 3

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知り合いを6人以上たどると世界中の人とつながる

昨日、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のGREEで知り合った方とお会いしました。
私の仕事内容と重なるところあり、また、年齢はまったくの同級生ですが、いちおう会社を独立した経験が長いことから、ビジネスの苦労話やお互いの夢のようなものをもろもろ。

私と違って第一印象が物静かで(笑)、知性あふれる方でした。
新しいビジネスでのご活躍を期待し、再会を約してお別れしました。
その後にお礼のメールも頂戴いたしました。

数奇な縁といいますが、確かに「縁」です。
ようは、携帯電話のボタンを押しているうちに、人と人が出会うのですからね。

ちなみに私はmixiも立ち上げ当初から加入していますが、こちらは実名で参加し、仕事仲間や、昔からの知り合いばかりが集まったSNS上のお友達。
同窓会みたいなものです。
つまり、出会いの場というより、近況報告の掲示板みたいな使い方になっています。

でも、GREEは私、骨折して入院中に手足を縛られた状態で、片手で携帯電話をもてあそぶ状態のとき、なんの気なしに入会したら、それから、あれよあれよ、お仲間が増えていったのであります。

以下、GREEの運営会社のホームページに由来が載っているのですが、スゴイですよ。
引用すると……

GREEは、6次の隔たりを意味する「Six De"gree"s of Separations」という統計学・社会学の仮説から名付けられました。これは、米国の心理学者スタンレー・ミルグラム(Stanley Milgram)の「人は、自分の知り合いを6人以上たどっていくと、世界中の人 とつながりを持っている」という仮説で、1967年に行われたスモールワールド実験(small world experiment)によって検証され、広く知られるようになりました。GREEという名前には、ネットワークやコミュニケーションに代表されるインターネットの「面白さ・便利さ・楽しさ」を新しく生み出していく存在でありたい、というメッセージが込められています。


なんですって。

比較対象は悪いですが、最近、逮捕された「円天」。
つまり、ネズミ講(無限連鎖講)は犯罪だけど、その根っこになる理論はGREEも同じ、とはいえないでしょうか。

GREE、ユニークです。
社会の鏡のようなところがあります。

映像と音声が合わないサイト

リクルートが発行しているフリーマガジンのホットペッパーCMのシリーズを覚えてますか?
たとえばこんな感じの……



映像と音声が合わないと、いや、映像と音声が合わないだけで、こうも人間は「おもしろさ」を感じるのか、と感心した記憶があります。ああ、人間は常識に凝り固まった生き物なのだな……などと妙に哲学的になったりして。

ホットペッパーのCMをつくるなんて大変そうですよね。
ところが……
後輩のグラフィックデザイナーくんから、「平林さんが好きそうなのがありますよ」とメールで教えてもらったのが、コレで、Tubedubberというサイトです。

YouTubeの映像を上のラインで選び、音声を下のラインで選ぶ。
すると、トンデモナイ映像と音声の組み合わせが次から次へとつくれてしまうのです。

古いものと新しいもの。
シリアスなものとコミカルなもの。
日本のものとイタリアのもの。
食べ物と英会話。
政治家の演説とアイドルの歌。

……のように対称的なものを並べると、ホットペッパー的な王道のおもしろ映像が、いとも簡単にできてしまうのです。私、相当このサイトで遊んでしまいました。

慣れてきたら、『地獄の黙示録』のように、戦闘シーンにワーグナーのような芸術的な組み合わせやってみましょう。

tubedubber.gif

平らな板による人間像



すいません、睡眠時間のリズムが崩れており、更新時間と頻度がバラバラのダメダメです。
いつも、来てくださっている方、すいません。

昨日ですが、日本工学院専門学校のCG卒業制作の発表会を観ました。
全部で41作品を2時間以上、連続した観たのですが、思わず手元のデジカメで動画を撮ってしまったのがこの作品です。ですので、私が言い訳するのもヘンですが、生で観るともっと迫力があってきれいです。

人物を平面の板で表現したのは、正解で、感覚的に言うと今の時代にフィットしてます。斬新です。
人の好みが分かれるキャラクターをつくるよりも、無機的なキャラクターのほうが「失敗」しにくい。
そこまで計算されていたのでしょうか。


彼ら(?)はロックバンドになってますが、いろいろなスポーツをしたり、街中の歩いてほしいと思いました。この作品の制作チーム以外、他の40作品をつくった皆さん、お疲れさまでした。

は、春……

green1.jpg

green2.jpg


土曜日ですが、もう仕事場で働いております。
通勤といっても徒歩数分なのですが、その間に、歩きながら写真を撮ろうと思いました。
モニターの中に入り込んでしまっている自分の視線を、自然に向けたくて。
すると、草のひとところに新緑が染まっていたり、路上脇の鉢植えに小さな花が咲いていたり。
春を感じました。

話はまったく飛びますが、飛びすぎるほど飛びますが、スウェーデンの自動車メーカー「サーブ」が、事実上経営破綻したのはショックでした。

挫折なき天才は体験を創造する

今、取り組んでいる原稿のひとつに、「働く男の挫折」を扱ったものがあります。
人はどこかで挫折する。
事業が失敗するとか、しないとか、そういう明らかな挫折ではなく。
「このままでいいの?」という自己懐疑とでもいいましょうか。
どこかで人は壁にぶつかるものです。
そんなことの、あれやこれやについて書いています。

実業家よりも、ものをつくるナイーブな作家は、とりわけ、壁にぶつかりやすいものです。

ピカソでさえ。
ビートルズでさえ。
スティーブン・スピルバーグでさえ。

夏目漱石でさえ。
谷崎潤一郎でさえ。
川端康成でさえ。

壁にぶつかりました。
モデルチェンジをするべきか、しないで自分の流儀を貫くべきか?
悶々とした日々を過ごして、さらに功を成したり、酷評を浴びることになったりして、それぞれのセカンドステップ、サードステップを歩んでいきます。

桜井政博さんという、著名なゲームクリエイターが、任天堂と
新会社を設立しました。

じつは、桜井政博さんは、いつも桜井君って呼ばせてもらっているので、そうさせていただいて桜井君は、なんと彼が19歳の頃からの知り合いで、私自身、ゲームのたくさんのことを彼から教わりました。

はじめて彼と触れあったのは、企画書を通じてでした。
彼の書いた企画書には、なにやらオーラがあって『はるかぜポポポ』というタイトルが、私はいたく気に入りました。それが、なんとのちに『星のカービィ』になって大ヒット作になってくれた、という思い出もあります。

そう、話を戻すと挫折です。
桜井君は、人の見えないところで本当に努力をしていることを知っています。
ストイックです。
プロフェッショナル魂のかたまりのようです。
そして妥協しない。

だから、もの凄い苦労をなさっているのはわかるのですが、それは、ここでいうところの挫折ではありません。楽しい努力です。努力を楽しんでいます。

だから、自己懐疑をしない。
悶々とせずに、しなやかに時代に自分を楽しんで進化させられるタイプなのです。
そう、ピカソ、ビートルズ、スピルバーグ、夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成というよりは、長嶋茂雄、王貞治、イチローのような雰囲気をかもし出しています。

昔、桜井君に言ったことがあるんだけど、覚えてくれてますでしょうか。
「桜井君は人間国宝っぽいよね」。
彼は天才です。

さて、新しいプロジェクトでは何をおやりになるのでしょう?

(岩田)
桜井さんにとっても、任天堂にとっても初めての試みですね。
スマブラではない特命案件を私はお願いしたということです。
(桜井)
今は内容を明かせないけど何かを作りますよ、としか言えないですね。いろいろな人がいろいろなものを作っている中で、とても特殊なプロジェクトが立ち上がった。売上がどうなるか、受け入れられるのかどうかもわからないものだけど、1本のゲームを作る目的だけでなく、今までとは違う体験ができる、というのは約束できます。


任天堂・岩田社長と対談なさっていて、上記の箇所がポイントとかと思いますが、全体を通じて「ゲーム」という語は頻出するのに、「テレビゲーム」「ゲームソフト」という語が出てこないのが特徴的だな、と思いました。

あと、単なる言葉の綾かもしれませんが、「今までとは違う体験ができる」というは、いつもの桜井君らしくない言い回しなんです。

ここに、このプロジェクトの意義が隠れている気がします。

ソフトをつくるのではないのです。
ユーザー・エクスペアレンスをクリエイトするのです。
遊ぶ人の体験をつくるのでしょう、きっと。
株主優待