Hisakazu Hirabayashi * Official Blog2009年08月

書く仕事は隠し事

Bunshun.jpg

今年の夏は、総選挙の夏でも、ベルリン世界陸上の夏ではなく、酒井法子容疑者の夏……と記録されるのかもしれない。

「あぶり」


は、不謹慎だが新語・流行大賞になるような気さえする。

ところで、写真は今週の『週刊文春』記事。
「実は、昔から知っていました」と言われても。

私の知り合いのマスコミ関係者は、“次”に危ない芸能人の名前を、ほとんどの人が知っており、『週刊文春』も、ぼやかして書いている酒井法子容疑者が信仰していたという宗教の名も同様に知っている。知っているが、書かない、書けないのだ。

私の仕事もそうだが、書く仕事は誤変換すると隠し事になるが、これは誤変換ではなく、物事の本質を知らしめる偶然の一致ではないだろうか?

カクシゴト。

社会という生き物を観察中です

新聞・雑誌の衆議院選挙の事前調査報道では、「自民党惨敗-民主党圧勝」が伝えられている。

●民主、圧勝の勢い 300議席超が当選圏 衆院選情勢調査
日本経済新聞社は30日に投票日を迎える第45回衆院選を前に全国世論調査を実施し、情勢を探った。全480議席のうち民主党は小選挙区と比例代表を合わせて単独過半数(241議席)を突破、300議席超が当選圏に入っている。自民党は100議席弱の当選圏にとどまっており、公示前勢力(300議席)に比べ議席を半数以下に減らすのは必至の情勢。民主党圧勝による政権交代の可能性が強まっている。

全国の有権者約21万人を対象に約11万人から有効回答を得た。取材も加味して情勢を読み取ったが、300小選挙区で24%、180の比例代表で17%がまだ投票先を決めていない。投開票日に向け流動的要素も残っている。


が、今日の日本経済新聞の一面だった。

「選挙」「政治」についての私見をここでは述べないが、私は今後、「社会」という生き物はどのように動くのか? 関心を強めている。

選挙のシーズンになると、アナウンス効果という言葉を聞くが、それには2つあって、ひとつは勝ち馬に乗る、バンドワゴン効果。ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなる。「バンドワゴン」とは行列の先頭の楽隊車のことであり、「バンドワゴンに乗る」とは、時流に乗るとか、多勢に与するという意味である。

もうひとつは、その反対にあたる「アンダードッグ効果」だ。いわゆる判官贔屓(はんがんびいき)。アンダードッグ=Under Dogの原意は“負け犬”だが、劣勢に立つ者を応援したい、あるいはバンドワゴンに乗っている多数の選択とは、一線を画したい……という心理が働くことをいう。

今週末に続いた報道は、バンドワゴンとなるか、アンダードッグとなるか。
いやいや、そんなアナウンス効果の常識さえ通用しないことが起きるのか注目するのだ。

プレイステーション3の値下げが発表されて以来、この件についてのお問い合せメールや、エントリーのリクエストを多数いただいている。

プレイステーション3 値下げ
を検索して、このブログに訪れてくださっている方も多いようだ。

月並みに、値下げ効果はあるでしょうとか、ないでしょうとか、何かを書けと言われれば書けるが、まだ、書く気が起こらない。いつか、絶対に書く事柄だと思うが、今は「社会」を見ていたい。というわけで、リクエストをいただいている皆さまには、お詫びとお断りを申し上げたい。

プレイステーション3が、ではない。
他の家庭用ゲーム機、特にWiiを含めて年末までの動向は、「社会」が決めると思っているからだ。
そして、ひょっとすると、とんでもない結果となるかもしれないと思っているからだ。

質問をされる、ということ

  • Day:2009.08.20 10:11
  • Cat:私…
質問は難しい。
質問されることも難しい。
われわれは漠然と「質問」と言っているが、「質問」は大きく分けて2種類あるかと思う。

……というと、知識のあるビジネスマンは、ああ、あれね、オープンクエスチョンとクローズクエスチョンね、と連想されるのではないだろうか。

「今日のランチは何を食べたいですか?」は、オープンクエスチョン=開かれた質問。
何を食べたいと答えてもいいから、オープン。

「今日のランチはイタリアンでいいですか?」は、クローズクエスチョン=閉ざされた質問。
この質問には「はい」か「いいえ」で答えなくてはいけないから、クローズド。

企業研修、ビジネス雑誌、コーチングの本などによって、質問には2種類あることが、一気にメジャーになった。

ところで、私は一昨日から明日まで総計して約21時間、質問を受ける側になっている。
某企業でのワークショップ、取材、知人からの相談などが、たまたま集中しているのだ。

で、オープンクエスチョンか、クローズクエスチョンか、であるが、私の場合は、あまり気にしていない。あくまでも言葉の流れ程度にしか、考えていない。

それよりも、今、行われた「質問」は、まったく知らないことを尋ねる「郵便局はどこですか?」型の文字通りの質問なのか。

それとも、「質問」の衣をかぶった、質問者があらかじめ用意していた主張のための、きっかけづくりなのか。質問には、この2種類が存在することを、むしろ私は重要視したいし、その違いがわかるようになりたいのだ。

つまり、知りたいという欲求と、自己表現したいという欲求は、正反対のものだから、質問された側は、その欲求にこたえるべきであって、逆なでしてはいけないのではない。

ということは、だ。

この数年で一躍有名になった感がある、オープンクエスチョンとクローズクエスチョンを軸にした質問の二分論は、否定はしないけど、それだけでは不十分なのではなかろうか。

(1)「わからないので教えてください」か。
(2)「私の主張のまえに、お尋ねしておきたいのですが」か。

質問意図の明確化―簡単に言うと「前置き」―の重要性は、もっと強調されたほうが良いと思うのだ。

……と、なかなか立派な訓話をたれているようで、私は質問されると多くを話しすぎている。
失礼・失敬なこともあったかもしれないと反省している、この数日間である。

今の私の課題は、質問に対する応答時間を短くすること。
そうすることによって、上記(1)であれば、多くの質問をお受けすることができるし、(2)であれば会話のバトンを早めに質問者に渡すことができる。

がんばろう、いろいろな工夫をしてみよう。

真の雄弁は雄弁を軽蔑し、真の道徳は道徳を軽蔑する。
哲学を軽蔑することこそ、真に哲学することである。


と、すごいことを言っているのは、パスカル。

プレイステーション3の選挙戦、はじまる

[ケルン(ドイツ) 18日 ロイター] ソニーは18日、家庭用ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」の新型機を9月に発売することを明らかにした。薄型化、低価格化を図った。価格は米国が299ドル、欧州が299ユーロ、日本が2万9980円で、現行モデルから大幅な値下げとなる。


……やっと発表された。
ハードディスク容量が120ギガバイト。
消費電力は初代モデルから34%カット。
厚みも32%削減。
9月3日発売。

どの数字も期待以上に、高スペックで、安く、そして発売時期も早い。
さて、これをどうやって、コミュニケーション・デザインするのかが問題だ。

プレイステーション3の選挙戦だ。
理念と国家デザインを持ちながら、夏祭りで有権者と握手をするような、アンビバレントな戦いがはじまる。

『デジタルコンテンツ白書2009』発刊セミナーのご案内

以下、ご案内です。
原文は事務局の方が作成したものです。
まずは、日時・場所等のお知らせを目的に転載いたします。



『デジタルコンテンツ白書2009』発刊セミナー

財団法人デジタルコンテンツ協会とコンテンツ学会は9月4日と9日、デジタルハリウッド大学の協力をいただき、標記セミナーを開催いたします。

9月4日は人材育成策に、9月9日は海外展開策にそれぞれ焦点をあて、専門家によるプレゼンテーションと会場参加者と一体となったディスカッションを行います。

また、9月4日と9日に共通して、議論に先立ちその前提でありますコンテンツ産業の市場規模について解説いたします。

ビジネス、政策、調査研究など、広くコンテンツに関心をお持ちの皆様の、奮ってのご参加をお待ち申し上げます。

http://www.dcaj.org/contents/frame04.html

〇開催日時およびテーマ:
・9月4日(金)15:00~17:30『コンテンツ人材育成策の経過と現状の課題』
・9月9日(水)15:00~17:30『アカデミー賞のインパクトと日本コンテンツ海外展開戦略』
〇会場: 
・デジタルハリウッド大学秋葉原メインキャンパス
〇主催: 財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)、コンテンツ学会
〇協力: デジタルハリウッド大学
〇受講料:
・財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)賛助会員 無料
・コンテンツ学会会員 無料
・デジタルハリウッド大学学生 無料
・一般 2,000円(会場受付にて申し受けます。)
〇お申込み: 以下からお申込みください。
http://www.dcaj.org/contents/frame04.html

〇お問合せ:TEL:03-3512-3901 E-mail:semi-wp2009@dcaj.or.jp
〇白書2009の販売について:
・受講料には、白書2009(定価6,000円)の対価は含まれておりません。
・当日、セミナー会場にて白書2009の割引販売(5,000円)を行います。
・セミナー前にご購入の方は、当日ご持参いただくことをお薦めいたします。

○プログラム
【第1弾:コンテンツ人材育成策の経過と現状の課題】
□日時: 9月4日(金) 15:00-17:30
□場所: デジタルハリウッド大学秋葉原メインキャンパス
□プログラム:
・コンテンツ産業の市場規模 
プレゼンタ:
宮島慎一 DCAJ研究主幹
・我が国コンテンツ人材育成策の経過と現状の課題
モデレータ:
福冨忠和 専修大学 ネットワーク情報学部 教授
パネリスト:
高橋光輝 デジタルハリウッド大学 学長補佐
平林久和 株式会社インターラクト代表取締役/ゲームアナリスト
増澤貞昌 株式会社シゲル代表取締役社長

【第2弾:アカデミー賞のインパクトと日本コンテンツ海外展開戦略】
□日時: 9月9日(水) 15:00-17:30
□場所: デジタルハリウッド大学秋葉原メインキャンパス
□プログラム:
・コンテンツ産業の市場規模 
プレゼンタ:
宮島慎一 DCAJ研究主幹
・アカデミー賞のインパクトと日本コンテンツ海外展開戦略
モデレータ:
福冨忠和 専修大学 ネットワーク情報学部 教授
パネリスト:
掛尾良夫 株式会社キネマ旬報社/キネマ旬報映画総合研究所 所長
数土直志 株式会社アニメアニメジャパン 代表取締役社長
森 祐治 株式会社シンク 代表取締役社長


私は9月4日に登壇予定です。
ご参加をお待ちしております。

プレイステーション3という立候補者はどんな選挙戦をするのだろう?

まず、いきなりお詫びをしますが、今日のエントリーは難しい。

政治とゲーム機を並べて論じることが、私の頭の中では当たり前のことなのだが、一般社会でまとも生きている人は、そんなことを考えたこともないだろう。考えたこともないから、理解しにくいことが予想される。

さらに、平易に書いているつもりでいるが、政治とゲーム(=コンピュータ、ゲーム業界)について、ある程度の基礎知識がないと、わからない内容になってしまっている。

誠に勝手なことを申し上げるが、以上のことをご容赦いただいたうえで、お読みいただきたい。



8月18日は衆議院選挙の公示日。
今日から本格的な選挙戦がはじまる。

今回の選挙戦のひとつのキーワードは「ばらまき」。
高速道路無料化、子ども手当の民主党の政策は「ばらまき」と自民党は批判する。
いいや、今までの「ばらまき」体質をつくってきたのは自民党、と民主党は反論する。

だが、両者が共通していることがあって、それは「小泉構造改革の見直し」である。
いきすぎた規制緩和・自由競争路線が、不必要な格差や貧困を生んだ……という考えは自民・民主両党の共通した主張になっている。

さて、もしかしたら、その告示日にドイツで発表されるかもしれない、プレイステーション3の新型モデルと値下げ。

私は昨日、それが巻き起こす現象は「本質ではない」と言い放った。
では、何が本質かというと、衆議院選挙と同じで、プレイステーション3は「構造改革路線」を見直すのかどうか……が今後の焦点ではないかと私は考えている。

つまり、こういうことだ。

プレイステーション3が薄くなりました。
軽量になりました。
値段も下がりました。
WiiやXbox360と比べたら、圧倒的に性能がすぐれたゲーム機ですよ。
……と発表されたら、「構造改革路線」を見直したことを意味する。

週内に行われるであろう発表は、「薄い」「安い」にコミュニケーションが絞られるのは、しかたのないことだ。だが、いつまでもこれをやっていたら、プレイステーション3は、ただのゲーム機になってしまう。政治の比喩に戻すと、大衆に迎合したポピュリズムに屈したことになってしまう。

薄さや安さではなく本質は、プレイステーション3とは何か?
かつて、同機が初公開されたとき、久多良木前社長は信念を込めて「スーパーコンピューティング・フォー・エンタテインメント」(Super Computing for Entertainment)と言っている。

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私は、これはWiiとは異なる、もうひとつの「構造改革路線」で、このコンセプトこそプレイステーション3の捨ててはいけない存在意義だと思ってきた。そして私は、この考えに共感をしている。

昨年の11月だった。
ある読者の方から、「プレイステーション3が復権するためにはどうしたらよいですか?」とリクエストをいただき、こんな記事を書いたことがある。

Super Computing for Entertainment.

それは何かと言われたら、
(1)かつては手つけることができなかったアナログなものをデジタルデータに変換する
(2)そのデータは膨大になるが、スーパーコンピュータであればリアルタイムな情報処理が可能になる
(3)こうしてできた膨大なデータを利用者は、インタラクティブな操作をすることによって、今まで見えなかったものを見ることができたり、今まで手で操作できなかったものを操作したりできる

単純に言ってしまうと、プレイステーション3は「未知体験機」であるべきなのだ。
この「構造改革路線」は、ぜひともこれから、突き進んでほしいと願う。

他のゲーム機と比べられ、レースやシューティングなどをするための「既知ゲーム機」と認知されたら、あまりにももったいない。さらに、「値下げしたのに、まだ他機より高い」だったら最悪だ。

かといって、Super Computing for Entertainmentに固執するのは、あまりにも原理主義的で、私が冒頭でお詫びをしたくなるくらいに、難解な概念を振りかざすことになる。

適度なポピュリズムとブレない原理主義の共存が必要なのだろう。
もちろん、対立候補のネガティブキャンペーンも。
そんなところも、政治、あるいは選挙戦と似ている。

プレイステーション3は値下げするのか?

OFFからONへの切りかえ。
私の夏休み明けは、「プレイステーション3は値下げするのか?」の取材や、問い合わせからはじまった。ゲーム業界の関心事は、この一点に集まっている。

なにせ、私は夏休みをとっていたので、熱心に情報収集をしていたわけではない。ではあるものの、身勝手にも逆取材などをさせていただいて、また、以前の情報を総合してみると、間もなくドイツのケルンで開催されるGamescomで発表される可能性は高い。

ネット上では、8月上旬から複数の観測記事が流れていたが、大筋において、その通りになる公算が大だ。

■仏小売業者が発言

■薄型PS3を8月18日に発表か

■ドイツのAmazonで、商品写真とともにPlayStation 3 Konsole slimの販売が予告

など。
特にAmazonのニュースは信憑性があり、写真つきで紹介されている。
(だが現在はAmazon.deでは出品されていない)

私がされる質問は、「いくら値下げされるか?」「値下げ後にまず販売される地域は日・米・欧のどこか?」「それによって、プレイステーション3の販売台数はどこまで伸びるか?」「任天堂、特にWiiへの影響は?」等のストレートな質問が多い。

大変失礼な言い方をすると、私はそれら質問自体に、あまり興味がわかない。
休み明けで、頭がなまっているせいもあるけれど、プレイステーション3の今後を占う意味での本質的な問題ではないように思えるからだ。

現象としては、重要な問題ではあるけれども。
私は、一種の思考ゲームではあるが、プレイステーション3値下げと、他のまったく異なる事柄を、結びつけて考えている。

それは明日に書くことにしよう。
そう、明日に書くのがふさわしい。
株主優待