Hisakazu Hirabayashi * Official Blog良き読者は書き手を育ててくれます

良き読者は書き手を育ててくれます

昨日のブログで、私のE3総集編ともいえる「E3 2011、旅の記録」を紹介させていただきました。のちにうれしいことがありました。ゲーム業界に属す、これはご本人が書かれていることなので明かしますが、外資の日本法人で働いていらっしゃる方から、以下のような感想を頂戴したのです。感想をいただくだけでもありがたいことなのに、転載の承諾をいただきましたので、原文ママで引用させていただきます。


ぼくにはひとつの確信に近い予感があります。
それは、いつか何かの時に、日本人であるということ、日本人として生きるということについて、ツケを払わされる時が来る、というある種の恐怖で、それを抱えながら日々を生きるのに、外資の日本法人で、彼我のギャップに苦しんでいる今の日常は、ひょっとしたら凄く理想的な修行期間かもしれない。
何故かそんなことに想いをはせながら読ませてもらいました。



とのご感想でした。
物書きが書いた原稿の裏側をいちいち説明するのは、みっともないことを承知のうえで書きます。

私はE3後、総括する記事を執筆する予定でした。ですが、ただのビジネスレポートにしたくなかった。あの記事の背中に隠したコンセプトは、まさに日本について考える、でした。

E3というフィルターを通して、日本のゲーム業界の行く末、もっと広く言えば、世界における日本の行く末を、読者の皆さんとともに考えていきたかったのです。そして、名が出てくるゲーム会社の皆さんには、日本を牽引するつもりでビジネスを成功させてほしい、との願いがありました。

ですから、ソニー・コンピュータエンタテインメントと任天堂。日本のハードメーカー2社をフォーカスしました。月並みになってしまうのを承知のうえで、Wii Uについては、あえて日米を対比的に記述しました。2004年に、日本市場進出を望んでいたGaijin Entertainment社のエピソードも挿入いたしました。本文の帰路のくだり。機中で目がさめたのは、厳密に申し上げるとアリューシャン列島と北方領土の中間地点でした。しかし、割りきって北方領土と書きました。

被災地に向かって黙祷した話も入れました。同行したNHKのディレクターと、日本人のマネジメント能力について語り合ったことも書きました。そして、私事ながら長男の話で締めたのは、次世代へのバトンタッチの暗喩です。

そんな思いを馳せながら、2晩徹夜して書いた記事でした。
まるで、この意図を見抜くかのようなご感想をいただき、しかも、外資の日本法人で働く方からの痛切なメッセージです。うれしくてしかたありませんでした。

じつは、このご感想をいただくまえに、別の質問を頂戴していました。
文中にある「名は書かないが、日本の某ゲーム会社大手」はどこですか、というご趣旨の質問でした。その企業はどこかの犯人探し? が、インターネット掲示板ではじまっているようでした。このご質問には、


企業名はノーコメントとさせてください。どこかの企業を批評する趣意ではございませんのでお許しを。あえて言うならば、開発ツールを自社で持ち、それを外部に漏らさないのが日本のゲーム企業の文化。逆に、例に挙げた『アンリアル』がそうであるように、一本ゲームソフトをつくったら、それをオープンにして、皆でチューンナップしていくのが米国の文化です。古くは、1960年代に生まれた古典的ゲーム『スペースウォー!』もMIT(マサチューセッツ工科大学)の学生たちが、何世代もチューンナップにかかわって一本のソフトを磨き上げ、アレンジを加えた別のソフトをつくっていました。この箇所は、企業名が問題なのではなく、自社製の開発ツールを武器にしていた日本企業の強みが、弱みに変わったきらいがあることの、全般的な傾向の指摘と解釈いただければ幸いです。(一部加筆・修正箇所あり)


と、返信いたしました。
公になった文章である以上、仕方のないことでありますが、筆者の意図しない方向に議論を巻き起こしていることを知って「私はひとりよがりをしただけだったのか」「冗長な挿話など入れずに、もっとE3の生の情報を入れたほうか良かったのか」……。拙稿に自信を失いかけた直後にいただいたご感想でした。

良き読者は、書き手を育てると言います。
冒頭のご感想をいただきました方には、感謝の念がたえません。
私に再び自信を与えてくださいました。
本当にありがとうございました。

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  • 2012/07/18 17:55
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  • 2013/06/07 23:44
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