Hisakazu Hirabayashi * Official Blogニンテンドー3DSは1万5000円でなくてはいけなかった

ニンテンドー3DSは1万5000円でなくてはいけなかった

ニンテンドー3DSが値下げした。
2011年8月11日から、現行の2万5000円(税込)から1万5000円(税込)に改定する。
発表サイトはこちら。
PDFでもリリース文を読むことができる。

私はこの報を移動中の電車内で知った。
考えた。
この任天堂の判断は是か非か、ついて。

まず、考えたのはソフトの価格(メーカー希望小売価格/以下価格と表記)だ。

ニンテンドー3DSのサードパーティ製のソフトを買うたびに思うことだが、価格が高く感じる。ニンテンドーDSが爆発的なヒットの足掛けとなった『脳を鍛える大人のDSトレーニング』。価格は2800円だった。2800円を要求はしない。

ニンテンドー3DSのソフトの心の中で思う適正価格は4800円が上限。
どうやら5000円に心理抵抗線があるのではないか、というのが私の仮説だった。

余談かもしれないが『スーパーストリートファイターIV 3D EDITION』と『バイオハザード ザ・マーセナリーズ3D』を4800円で発売したカプコンは、この5000円=心理抵抗線を理解して価格決定をしている。
良心的かつ優良なプライシングだと思っていた。

したがって、2万5000円から1万5000円ではなく、ハードの価格は1万9800円にする。そのかわりに、サードパーティが任天堂に支払う製造委託費を下げる施策はなかったのか? という思考が真っ先に頭に浮かんだ。

大幅値下げの弊害は、販売店にもしわ寄せが来る。
当然ながら、1台販売した時の利益は減る。

Twitterをのぞいて見ると、「だったらニンテンドー3DSを買うかな」とつぶやいている人がいた。

そうじゃない。ユーザーが購入するハードの値段が下がっても、サードパーティのソフト、販売店の売る気、さらに開発環境の整備など、多数の要因が結びつき合って、ゲームプラットフォームの繁栄がもたらされる……と言いたい心境になった。

それ以外にもバカなことを考えた。
いっそのこと「ニンテンドー3DS」という名称を改めて、「ニンテンドーDS3」にすると、数千万人いるニンテンドーDSユーザーが乗り換えるのではないか、など。

いや、待て。
PlayStation VITAを仮想敵とした場合に、Wi-Fiのみモデルと比べて1万円の差、Wi-Fi+3Gモデルと比べて約半額になる。やはりインパクトがある値下げだったのではないか。頭の中で、この判断は「是」という考えも湧き出してくる。

移動先からまた電車に乗って帰ってきた。

電車には多数の中吊り広告がある。
駅には売店がある。
オフィスに戻るまえにコンビニエンス・ストアに立ち寄った。
私はふっと目が覚めた気がした。

サードパーティのソフトの価格。
販売店の売る気。
製品のネーミング。
PlayStation VITAとの比較。

これらはすべてゲーム業界に軸足を置いた思考ではないか、と。

視線をもっと引こう。
マクロに見よう。

ニンテンドー3DSを、裸眼立体視できる任天堂の携帯ゲーム機と見ることをせずに、駅の売店で売っている栄養ドリンクや、コンビニエンス・ストアにおいてあるヨーグルトと同じように、「商品」のひとつと考え直すことにした。

ニンテンドー3DSは5月あたりから「値崩れを起こしている」と言われるようになった。
中古品も出回り、オークションサイトにも出品されていた。その価格帯はすでに1万円台だった。
新型ゲーム機としては異例の現象である。
(*注/時間により流動性のある価格の記述は削除しました。7月29日5:20修正)

経済用語の使い方としては、正確ではないが、話をわかりやすくするためにあえて使う。
「神の見えざる手」という言葉がある。
もともとはアダム・スミスが『国富論』で書いて、有名になった言葉だ。

経済活動をしていると、市場は生き物のように動き、人間の力ではどうしようもない神の力が、売上や利潤や価格を決定する。

ニンテンドー3DSは、神の見えざる手によって本来の価格から実勢価格に操作された。
ということは現行の実勢価格より、価格を落とさないと、事実上、値下げしたことにならないのだ。

sd.gif

上図。
需要がD2ではなくD1ならば、P2はP1になる。
供給量(supply)に比して、需要(demand)が少なければ、価格(price)が下がる市場原理のもとで、われわれは生活している。

ゲーム業界の頭では考えない。
日々いとなまれていれる経済活動の頭で考えたら、この時期に任天堂が2万5000円のものを1万5000円にしたことは、「是」なのである。

だから、ニンテンドー3DSはこれからよく売れるとも、売れないだろうとも言っていない。
サードパーティが喜ぶとも、喜ばないとも言っていない。
ゲーム業界思考を頭から取り払った。

その結果、他者から「値崩れが起きている」と言われる期間が続くよりは、任天堂自らが「値下げしました」と言ったほうが得策だ。そして、その価格は1万5000円でなくてはいけなかった、という部分の結論にたどりついた。

【ご参考】
上記の文章を簡単に書きました。

クリックしてください
http://ameblo.jp/hirabayashihisakazu/entry-10968733426.html

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  • 2011/07/28 22:27
No title
需要と価格のバランスによって是正された、か
ゲームの常識を取っ払って考えたら確かに必然とも言えるなぁ
  • 2011/07/28 23:23
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No title
なるほど・・・w。
でもやっぱり1万5000円になってもサードパーティのソフトが充実してないのでね・・・。
  • 2011/07/29 20:09
  • URL
No title
どっかの偏向アホブログが騒いでるので(タイトルしか見てないので
中身はみてません、当然ページにもアクセスしてません)
見に来ましたが、ゲーム云々ぬきにして市場原理にのっとった
意見でわかりやすかったです。

例のアホブログとそれに煽られたバカが大量にきて大変だとは思いますが
がんばってください
  • 2011/07/29 21:08
  • URL
ありがとうございます
励ましてくださった方、どうもありがとうございます。
煽る人は内容ではなく、文体だ、という考えがありまして、実験的にですが、アメブロで同内容のことを書いてみました。


http://ameblo.jp/hirabayashihisakazu
アメブロ風
>>平林久和さん
アメブロ風見させていただきました。
正直思いっきり笑わせてもらいました。
同じ内容なのにこれはだれが書いたんだと思ってしまいましたね。
文体もさることながら、やはりホームページのデザインが違うと
印象もちがいますね。
絵文字もふんだんに使われてますし。

おもしろい実験だと思いますw
  • 2011/07/29 21:51
  • URL
なるほど
私は任天堂のここ数年のリリース内容やハードに対する考え方は、「ゲーム人口の創出」に尽きると考えています。それから数年がたった今、その時旬であったターゲットは年をとり、ゲームハードに「違う何か」を求めているんだと考えています。中学二年生が邦楽を捨て洋楽を聴くのと変わらない現象ではないでしょうか。任天堂が自ら作り出した「ゲーマー」はきっとそれと同じように次のハードを求めるでしょう。しかし結果として3DSは彼らに対して次のハードたるものではなかったのではないでしょうか。私は任天堂にはこれからも「ゲーム人口の創出」をどんどん進めて欲しい。ただそれには携帯機25000円というハードルはあまりにも高すぎたと思います。
  • 2011/07/29 22:00
  • 名無しです
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No title
とても解り易く、また納得の出来る記事だと思いました。
煽りに負けず、これからも良いお話を聞かせて下さい!
  • 2011/07/29 23:38
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No title
興味深い記事でした。
「定価」が前提ではなく、実勢価格が重要と言うのは、
言われてみればその通りなんだけれども、
知らず知らずのうちに定価前提で考えてしまうので、
目からウロコな記事でした。
  • 2011/07/30 00:47
  • URL
No title
面白いと思います。
感じ方も考え方も人それぞれ。
でも結論としては、やっぱり3DSは15000円にしなければならなかったんだと思います。
だから15000円になったのでしょう。

以下蛇足。
個人的には年末まで待って20000円にすれば良かったのに、とか思います。
価格が下がりすぎると任天堂にもダメージが大きいだろうし、長い目で見たら辛いんじゃないか、とか。
でもそれってやっぱり素人考えなんですよね。
私なんかが思いつくようなレベルでは所詮想定の範囲内というか、要するにインパクトがない。
岩田社長は前から値下げとか意味ないと言ってましたし、絶対したくなかったんだろうと思います。
絶対したくないことを敢えてするからには、どうせなら最大のインパクトと効果を狙う必要があったんでしょう。
でも、やっぱり個人的には現行モデルは値段据置で、廉価版(小さいお子様用に3D立体視機能を削除した3DSキッズとか)を15000円で売るとかして欲しかったなぁ。
  • 2011/07/30 09:49
  • MMB.
  • URL
No title
なぜ1万五千円なのか?答えは簡単です。
PSPが国内売上が調子が良いとか、VITAが控えてるからとかではありません。
もちろんそういう要因も少しはあるかもしれませんが、一番の大きな要因は
3DSが発売してるのに海外のDSの売上がちっとも落ちないからです。
北米では360に次いで、未だにDSが現役で売れていました。
任天堂としてはDSの乗換えを推進するために販売価格より安くする必要があったわけです。
  • 2011/08/14 02:31
  • アルさん
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No title
旧型DSのことを考えれば、上位機として19800円でスタートすれば、DSを買おうと思っていた層(新規、買い替え)にアピールしたのに、25000円では感覚的には倍の価格なのでちょっと予算足して買おうとはならない。
平林さんはVITAの価格の半分ということを言われますが、多分VITAの実機を見たら画面の大きさと高解像度、有機ELの美しさ。そしてPS2とPS3の間の高い3D性能で一目見て違うものだとわかるので比べてどちらを買おうかなとはならないと思います。任天堂ソフトをやりたい人は3DSということになるのでは?やはり任天堂ソフトが充実していない今は3DSについての評価ができないです。
  • 2011/08/16 08:12
  • xetech
  • URL
マジコン
面白いと思います。
感じ方も考え方も人それぞれ。
でも結論としては、やっぱり3DSは15000円にしなければならなかったんだと思います。
だから15000円になったのでしょう。
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  • 2011/09/05 08:20
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