Hisakazu Hirabayashi * Official Blogもうひとりの大切な年下の友人

もうひとりの大切な年下の友人

彼のことを語るのは、旧Blog時代から数えて4回目になります。
半ズボンをはいた小学生の友人の友人の話をしました。

小学校4年生の時に出会って、今でもつきあっていて、立派な作家として活躍している生井俊氏の話。

この話に、ちょっと似ていて、かつての……世間でいう、いわゆる教え子なんですが、最近では教わることの多い、前途有望な若者の話をします。

彼は日本工学院八王子専門学校で出会いました。
試しに新作ゲームの企画書などをつくってごらん……と私は出題。

いろいろな企画書が届くわけですが、はじめて見たときからピンと来ました。
「コイツヤルナ」と思わせる何かがあったのです。

ゲームに毒されていない。
けど、ゲームをよく知っている。

毎回、人の気持ちのいろんなツボを押してくる。
そんな、ただならぬ才能を感じました。

彼ならきっとプロとして食っていける。
学生さんがつくった企画書で、そこまで思えるものはめったにありませんが、明らかにレベルが高かったのです。

ところが、人気職業であるゲーム企画者の道は険しい。就職活動は苦戦していました。
そんな時、私は友人のゲームプロデューサー。やはり、友人の水口哲也氏から相談をされたのです。

「平林さん、若くてイキのいい企画できる人いない? もう完成しているというより、これから育てていける感じの若者……」。

真っ先に思いついたのがKazu君でした。
私は、早速、彼を紹介して面接してもらうことになりました。

水口哲也氏は彼を気に入ったらしく、予定時間を大幅に延長して面接してくれました。
しかし……当時・代表取締役でもあった彼の採否は否。つまり不採用でした。
ですが、親切な水口哲也氏は年長者としてKazu君にアドバイスをするのです。

「旅に出よ」と彼は言いました。
君は才能はあるがまだ経験が足りない。

旅をして世間を見よう。広い地球規模の視点から今の日本や自分を見直そう、という意味が、その一言には込められていました。

この手合いのアドバイスは聞き流されることも往々にしてあるのですが、Kazu君の場合は違いました。一旦は放送関係の会社の就職先が決まったのに断り、単身、ニュージーランドに住むことを決断するのです。

そのために英語も一から勉強し直していました。
出発直前にもらったメールに「ボクはもういちどテレビゲームがない国、ゲームをしない生活をして、自分が本当にゲームをつくりたいのか確認しに行きます」と書いてありました。

私は胸がジーンとしました。
Kazu君の真っ直ぐな生き方、人の言葉に対しての素直な受け入れ方に、私は自分自身が失ったものを見たのです。

それから約1年後、またメールが届きました。
「日本に戻ったら、見てもらいたいゲームの企画書があります。その題名はもう決まっていて、『人間』というタイトルです」。

私と水口哲也氏はインターネットラジオの番組で、「もし『人間』というタイトルのゲームが発表されたら、絶対それをつくった人に会ってみたい」と語ったことがありました。問題意識の高いKazu君は、その発言をきっちり覚えていてのです。

そんな企画を持って帰国。
では、お祝いだ……ということで、私と水口氏と3人で会食。
恵比寿で和食三昧というセッティングをしました。

「男子三日会ざれば刮目すべし」といいますが、想像の通りでした。
見た瞬間に以前とは違っていたことがわかりました。
顔色が良く、笑顔が多く、逞しく、話す言葉に自信に満ちています。

ひとしきり、留学先のニュージーランドの話題のあと、「で、日本に帰ってきて仕事は?」と聞くと、その答えに驚きました。彼はゲーム業界就職志望者で、英語もずいぶん上手になったので、マイクロソフトかエレクトロニック・アーツの日本法人に就職したいとでも言うのかな……と思っていた私がバカでした。

彼は「ボクサーになる」と言いました。
そのために通うジムも決めており、場所は横浜の鶴見なのですが、ジムの近所にアパートも借りたそうです。

「どうしてボクサーに?」と聞くと、まあ、当然ながら理由はいろいろあったわけですが、その中でも「自分の物語をもう少しつくりたい」という答えが真意に近かったように思えます。

ゲームプランナー志望の学生がボクサーだけでも驚きなのですが、話をしていると、さらに驚くことになります。

「もうひとつ、やろうかなと思っている仕事があって……」。
「それは何?」と問えば、ホストだそうです。
彼のカバンにはアルバイト情報誌が入っていて、ホスト募集のページを広げて「どの店が良いと思います?」と真顔で尋ねます。

この時点で降参しました。
彼は私の教え子ですが、もう何もアドバイスすることなんか、ありはしません。
むしろ、逆でしょう。
彼が私に説教を垂れるべきなのです。その資格が彼にはあります。

「ちまちまと仕事してちゃダメですよ、ボクサーとホストを同時にやるぐらいに思い切って生きなさい」と言われたら、私はグーの音も出ません。

実際、ホストの商売はすぐに辞めたのですが、私は「昼は殴り、夜は抱く」という見出しを、どうしても書きたくて、彼をヒーロー自立てにし、ちょっと脚色してブログに書いたことがあります。これ、ウソのような本当の話です。

「人間」という名のゲームを考えた青年が1年間かけて考えた結論は、自分という存在をゲームにすることでした。

時は過ぎて今年の春。
私は新宿区のとなる病院に入院していました。
わけあって、入院先はあまり公言できなかったのですが、そこに彼はひょっこりあらわれてくれました。
驚きの面会でした。

病室で彼は言います。
「私は平林さんのために何かすることが、自分のためになることだと思って、ここに来ました。
小間使いでもなんでもいいから使ってください」と。

そして「今年は花見ができませんね」と言って病室に綺麗な花束を病室に飾ってくれ、そんなことまでしてくれて、今までの恩を返そうとしてくれたのです。

この、見舞いに来てくれた時でした。
彼は、入院中で動けない私に向かって、名刺を渡してくれました。
そこには、こう書いてあったのです。

Yesterday is history, Tomorrow is mystery, and Today is a gift.
(昨日はヒストリー、明日はミステリー、今日は感謝)

特に彼は「感謝」が大事であることを強調し、それを実践する日々。
その行動力と突然の見舞いが通じているのです。
ちなみに彼は、その名刺を地で行くようなBlogを、やさしい文体で書き続けています。

話は先週に移って……。
ある会社の5周年パーティの話で、私がこの言葉を教わった旨を書いたら、すぐにルーズベルト夫人のスピーチのエピソードをまじえたコメントを送ってくれました。本当に律儀な男です。

彼は近々にビジネスを立ち上げる予定です。
おおまかなプランは聞いてますが、いつ、どこで、どのように……かは知りません。

でも、わかります。
彼は成功する。
というか、成功しか彼を待っていない、ということが。

Kazu君、いつでもいいから、走れ!
花をありがとう。
「小間使いになる」とまで言ってくれてありがとう。

今度は俺が恩返しする番だ。
その時は応援する。


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Comment

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  • 2008/11/12 11:54
何が重要か?
もう2年くらいまえになりますが、平林さんの講演を聞かせていただいた者です。テーマは通信にかかわることで、まだNTTドコモにいらしゃった夏野さんもご一緒でした。比べては大変失礼ですが、「上から」ものを言われる夏野さんとまったく違って、なんて謙虚な方なんだろうと思いました。それでいて、卑下したモノの見方ではなく、私のようなお堅い組織にいると絶対に聞く事がないような、大所高所・柔軟な発想が非常に印象的でした。ブログもほぼ毎日読ませていただき、いつかコメントをと思いしり込みしてましたが、今日の記事を見て、平林さんのお人柄の元の部分を見た気がしました。まずますのご活躍を期待しております。いずれ、弊社でもセミナーなど開催させていただくのが、私の夢です。
  • 2008/11/12 12:41
  • 受講者
  • URL
年下なのに・・・
TGLのあのkazu君・・・本当に尊敬しますね。すごいバイタリティというか自分にはない部分が多すぎて。NZに行ったとは聞いてましたが日本に戻ってきていたんですね。頑張ってもらいたいです。
  • 2008/11/12 12:43
  • albedo
  • URL
  • Edit
albedoさん、コメント、ありがとうございます。TGLのリスナーでいらした方ですね。こんな縁でKazu君も応援してもらえて、喜ぶと思います。彼になりかわって感謝いたします。
受講者さん、コメント、ありがとうございます。うーん、実名が出てきて、こそばゆいようなお言葉をいただいて、なんとも申し上げにくいのですが、ともかくありがとうございます(笑)。
感謝
何か本当に、ありがとうございます。平林さんが語ると、ドラマティックなBGMが流れてくるかのようです。

読んで僕を知って下さったみなさんが描くイメージをきっと、良くも悪くも裏切りますが、引き続きミステリアスな物語の続きを楽しんでゆきます。

albedoさん、各地に潜むTGLつながりの方の存在に気づくとき、心がセピア色に暖まります。ありがとうございます。
お、来てくれた。
ありがとうございます。

>TGLつながりの方の存在に気づくとき、心がセピア色に暖まります。

かっこよすぎるゾ(笑)。
最近、レトリックがうまくなったんだよな。

若いウチのレトリックは醜いけど、年とともに身につくレトリックは財産だ。

ではまたー。
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