Hisakazu Hirabayashi * Official Blogさよなら3題

さよなら3題

1.太宰治の『グッド・バイ』

セットの終ったころ、田島は、そっとまた美容室にはいって来て、一すんくらいの厚さの紙幣のたばを、美容師の白い上衣(うわぎ)のポケットに滑りこませ、ほとんど祈るような気持で、「グッド・バイ」とささやき、その声が自分でも意外に思ったくらい、いたわるような、あやまるような、優しい、哀調に似たものを帯びていた。キヌ子は無言で立上る。青木さんも無言で、キヌ子のスカートなど直してやる。田島は、一足さきに外に飛び出す。ああ、別離は、くるしい。


太宰治の小説『グッド・バイ』の中の一節です。題は、『グッド・バイ』ですが「グッド・バイ」というセリフは上の箇所しか出てきません。未完の小説ですが、いろいろな文庫本などにも収録されています。


2.井伏鱒二の名訳


中国は唐の時代、詩人・于武陵が別れを書いた以下の作品があります。

勧君金屈巵
満酌不須辞
花發多風雨
人生足別離


これを凡人が普通に訳すと

君に酒を勧める。黄金の杯で。
この満杯に注がれた酒を断ってはいけない。
花が咲いても雨が降ったり、風も吹いたりする。
それと同じで、人生に別れはつきものだ。

みたいなもので終わってしまうのでしょうか。
ですが、人生の苦楽を知った作家が大胆に意訳し、日本語のリズムにあわせると、まるで別物のように血潮が流れます。

以下の訳をしたのは井伏鱒二。
ちなみに、太宰治の師匠でもあります。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ


「花に嵐のたとえもあるさ」と記憶なさっている方が多いようですが、「あるぞ」が正しい訳文です。
すばらしいですね。この引き締まった文章。
以前、GREEの日記で、別れについて日記を書いたら、それを書道作品になさってくださった方がいらっしゃいました。自分の日記にインスパイヤされ「書」にしていただいた感動が忘れられず、お願いいたしましてお許しをいただいたので、ここに転載させていただきます。


sayonara.jpg
*作:アーチュー様

3.タイム・トゥ・セイ・グッバイ(Time To Say Goodbye)




で、さよならといえば……思い出すのはサラ・ブライトマンで、この曲です。
本当は盲目のイタリアのテナー歌手、Andrea Bocelliが歌った曲ですが、サラ・ブライトマンのソロバージョンが好きなんです。そしてこの曲は、私が愛してやまない、セガの競馬メダルゲームのBGMにもなっています。

以上、さよなら3題でした。
フリもなければオチもなし。
失礼いたしました。

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