「テレビの、これから」、個優組劣と私はまとめました
- Day:2009.03.27 00:00
- Cat:メディア
さらに昨日のつづきです。
ディレクター氏とのメールのやり取りで、いくつか舞台裏をお教えいただき、私が隔靴掻痒……議論が深まらない要因は「スタジオは台本なしだから」という、場面構成と進行上以外の理由もあることがわかってきました。
私や、多くの視聴者の方が望んでいた、テレビのタブー。
そのタブーの領域に踏み込むべく、けっしてそれをスキャンダラスに描くのではなく「テレビの、これから」を良くするために避けて通れない問題として、ディレクター氏は、番組制作まえに奮闘努力なさっていたことがわかりました。
しかし、まさにタブーに触れるために出演を拒否されるなどのことが多々あったそうです。
たとえば、高給を得ているテレビ局社員に対して、「劣悪」ともいえる労働条件で働いている下請け制作会社のスタッフ。彼ら、彼女たちが……今のテレビ局を批判し、仮に「この制作費では良い番組はつくれない」と言えば、それこそ議論は盛り上がったかもしれません。ですが、これをやってしまったら、その制作会社は経営危機になってもおかしくないわけで出演できず。
あるいは、ディレクター氏は私が書きました、視聴者が「スポンサーによる圧力って本当にあるんですか?」……なんて議論があったら、それこそ本当に画期的だったと思うのです。
……については、
我々もそれをやりたかったのです。
それはNHKという場でしかできないことなので、ときっぱりおっしゃっていました。
そのため、番組制作者だけではなくスポンサーの宣伝部長、テレビ局の営業担当者。広告を売買する現場の方の出演を構想するも実現できず、ディレクター氏いわく「優等生的な人選」になってしまった。
さらに、取材時には、かなり突っ込んだ意見をお持ちだった出演者の方も、あの場になるとなかなか言えない雰囲気だった、などと言う舞台裏を明かしてくださいました。
というわけで、私は……私がつくった四字熟語なのですが「個優組劣」というのがあります。個人は優秀だが、組織が結果を劣悪にせしめる、の意味です。厚生労働省で働いている個人にお会いしてみると、とても立派な志しを持った優秀な方だが、組織全体でみると社保庁年金問題や天下りの問題があるなー、という場面などで使います。
本番組もそういう部分が多分にあって、ディレクター氏をはじめ、スタッフの方、個人は真剣に番組をつくっている。のみならず、まさに今回のように、放映後にはブログの反応をブログでの反応をリサーチして、長文のメッセージを送る。そこまでして「テレビの、これから」を考えている。
しかし、組織というフィルターがかかると、圧力がかかると、出演できない、発言できない、となってしまう。
これはテレビに限ったことではありません。成熟しすぎて、閉塞感が漂う日本の多くの組織の問題、「個優組劣」の一例を見た思いがしました。
ディレクター氏と呼ばせていただきました渋谷さん(仮名)、どうもありがとうございました。たいへん有意義なご意見をうかがうことができました。今後も良い番組づくりに邁進なさってください。
と、個人に敬意を表すいっぽうで、同番組で最も緊迫したシーンともいえる、「浅野さん」の動画がYouTubeから削除されています。
この動画はNHK(Japan Broadcasting Corporation)さんによる、著作権侵害の申し立てにより削除されました
……とメッセージが表示されます。
これは筋が通らない、他のNHKの番組が数え切れないくらいにYouTubeにアップロードされているのに、この動画の削除理由が著作権侵害とは!
はい、こんなところにも私は「個優組劣」を感じ、「テレビの、これから」を案じたくなる次第です。
ついで言わせていただくと、YouTubeの「NHK(Japan Broadcasting Corporation)さん」は間違った日本語の用法です。組織名に「さん」をつけてはいけません。