Hisakazu Hirabayashi * Official Blog葉桜と魔笛

葉桜と魔笛

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桜が散った。
この季節になると、読みたくなる小説がある。
題名は『葉桜と魔笛』。
太宰治の短編小説だ。

最近の文章は、上の四行のように、ひとつの文を短くするのが主流だ。

ミステリー小説も。
スポーツ新聞も。
ビジネス書も。
エッセイも。
ブログも。
論文も。

ダラダラと「、(読点)」をつなげて書くと先生や編集者に怒られる。
だが、太宰治の女性一人称で書いた小説は、読点がどんどんつながって、息の長い文章になっているのだが、それがまた、なんとも、女性特有のとりとめのない独白らしい、良い味を出している。

たとえばこんな風に、だ。

いまから三十五年まえ、父はその頃まだ存命中でございまして、私の一家、と言いましても、母はその七年まえ私が十三のときに、もう他界なされて、あとは、父と、私と妹と三人きりの家庭でございましたが、父は、私十八、妹十六のときに島根県の日本海に沿った人口二万余りの或るお城下まちに、中学校長として赴任して来て、恰好(かっこう)の借家もなかったので、町はずれの、もうすぐ山に近いところに一つ離れてぽつんと建って在るお寺の、離れ座敷、二部屋拝借して、そこに、ずっと、六年目に松江の中学校に転任になるまで、住んでいました。


文章の味わいだけではなくて、ちょっとした謎解きのようなところもあって、この小説が本当に好きで、また読み返してしまった。

青空文庫で読めます。
こちらです。

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  • 2011/04/17 06:31
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