Hisakazu Hirabayashi * Official Blog業界で何位? と考えると業界の海に沈んでいく

業界で何位? と考えると業界の海に沈んでいく

全部が全部とは言わない。
言わないが、考え直すべきは「業界」である。

私はゲームビジネスについて、執筆したり、インタビューをお受けしたりすることが多い。的外れな発言、問題発言もあるが、当を得た発言をすることはたまにある。その発言が、他のメディアで引用されるなどすると、「ああ、少しは影響力があったのか?」と、この虚業家も、陰でホッと胸をなで下ろしているのである。

このブログでも何度か使った言葉だが、かつて私は「任天堂業界」という造語をした。
ゲーム業界のなかで、任天堂という企業は、シェアを何パーセント持っている、という観点でものを見るのではなく、任天堂はもはやゲーム業界から離れて、独自の業界を興すことになるだろう、と考えていた。

そんな意図を込めて「任天堂業界」と書いた。
調べてみたら、なんと7年まえのことだった。
2002年2月26日に、企業向けのクローズなレポートで、私はこの用語をはじめて使っている。

その後、どうだろう?
ニンテンドーDSが2004年冬に発売されヒット。
ラインナップされたソフトも、今までのテレビゲームのイメージを一新した。
脳を鍛えたり、英語を学習したりするものがヒットした。任天堂は、自社ハードとソフトが一体となって、独自の巨大市場と文化をつくることに成功したのだ。

2006年にはWiiを投入。
これもまたヒット製品となった。「任天堂業界」は企業の売上ではない、業界規模はさらに成長したこととなる。

ソニーの幹部の方からうかがった話で、こんな印象深いものもある。
伝聞情報なので、間違っていたら申しわけないが、ソニー創業者である、井深大氏と盛田昭夫氏のエピソードである。

どこの会社でもそうであるように、開発した製品を商品化する際には、社長が最終決裁をくだす。

プレゼンテーションの場、開発者は、製品の性能や仕様や販売計画などを熱心に説明する。

すると、当時の盛田社長は「消費電力は?」「利益率は?」のような、けちくさい質問をしない。

スバリと、じつにスケールの大きな発言をなさるとうかがった。
「『産業』になるくらいの変革をイノベーションと呼ぶ」と井深大氏は言ったそうだ。
そして盛田昭夫氏は、マーケティングの一般的な訳語「市場適合」を凌ぐモノづくりをする、という意味で「市場創造」を訴えた。

産業・市場・社会へ影響を創造するくらいのインパクトがある、モノづくり。その意気込みから、ウォークマン、ハンディカム、CDプレイヤーは……生まれた製品であると、私は自分の心にとどめている。

アップル社のスティーブ・ジョブスは、家電業界のうちの音楽再生機市場を獲得しようとiPodを発売したのでない。コンピュータの中に入っている音楽を持ち運ぶことを目標として、iTunes to goを唱えた。そうしたら、とんでもないアップル業界ができてしまったわけである。

これだけ他社のことを、誉めたたえておいて、最後に落とすようで心苦しいが、マイクロソフトの新型Zuneは、いかにもすでに形成された業界の枠内で発想され、そのチェレンジャーとして、シェア向上を目指す……という狙いが見えてしまう。

良くない製品とはいっていない。
売れないとも言っていない。

ドラマティックではないのだ。
セクシーではないのだ。

むしろドラマよりもセオリー通りに。
セクシーさよりも堅実さを第一につくった、生真面目な携帯端末業界の新製品の匂いがする。

任天堂は「ゲーム&ウォッチ」を出し、ソニーはウォークマンを出し、スティーブ・ジョブスがガレージでコンピュータを組み立てていた頃、ビル・ゲイツはMS-DOSの原型を完成させている。そのときに「OS業界のシェアをとろう」とは、けして考えていなかったはずだ。なぜならば、当時はOS業界など存在しないのだから。

業界の固定観念に縛られたとき、その製品やサービスは業界の海に沈んでいく。
全部が全部とは言わないが……。


*注)本稿は文中、「ソニーの幹部の方」より訂正すべき箇所のご指摘と、正確な情報をいただきましたので2009年6月4日加筆・修正を行いました。

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  • 2009/06/04 11:37
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