Hisakazu Hirabayashi * Official Blog心理学で分析する『ドラゴンクエストⅨ』(1)

心理学で分析する『ドラゴンクエストⅨ』(1)

『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』が不評であることについて。

わかりました。
書きます。

……と大見得を切ったが、どう書くかを決めかねていた。
新聞や雑誌の依頼原稿では、書けないことを書く、それだけは決めていた。

一晩考えた。
そうだ、心理学の話をしよう。

まずは、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』(以下『ドラクエ9』と表記させていただく)の動機について考えたい。

『ドラクエ9』の購入者=プレイヤーは、何をしたくてソフトを購入したのだろう?
特にゲームをはじめて最初の数分間、プレイヤーはどんな深層心理に支配されているのだろうか?

壮大なドラマの主人公になって、世界に平和をもたらしたいのだろうか?
運命で結ばれた素晴らしき仲間と友情を築くことに、期待で胸をふくらませているのだろうか?

違う。
動機はもっと単純だ。

パッケージの封を開ける。ソフトを起動させる。名前を入力する。
その時、プレイヤーは何を思うか?

早く敵と戦いたくてウズウズとしているのだ。
戦って成長したいのだ。

物語の長い前置きはいらない。
『ドラクエ9』はロールプレイングゲームなので、最低限のルール説明や、背景となるストーリーの記述は必要だ。だけれども、それを最小限に短くする文章の達人が、堀井雄二氏だ。

ところがどうだろう?
『ドラクエ9』のプレイヤーは、なかなか戦いをさせてもらえない。

そうではなく、プレイヤーは善行を行うように導かれていく。
たとえば、教会にいるおばあさんにあるものを渡すと、感謝のしるしとして「星のオーラ」を得ることができる。

このゲームの導入部分、文学作品としてはならば美しいのだが、ゲームという人間の生々しい本能と直結する商品としては、常道からはずれてはいないか。私はそう思った。プレイヤーの心理的欲求を満たしていないからだ。

アブラハム・マズローという心理学者がいる。
自己実現理論、あるいは「マズローの欲求5段階説」と呼ばれる理論を唱えた学者だ。


(1)人間は、まず生きたい。
(2)そのために安全でいたい。
(3)仲間に認められ愛されたい。
(4)多数の他者から承認され、自尊心が満たされたい。
(5)そして、(1)から(4)が満たされたならば、人間らしく自己実現し社会に貢献したい。


大胆に要約すると、マズローはそんなことを言っている。

Maslow.jpg
*上記図はhttp://www.sbbit.jp/article/1357/より引用させていただきました。

ところで、『ドラクエ9』の冒頭の場面は、この理論に適合していない。
ここに今回のアマゾン・レビュー星1つ問題のはじまりがある。

プレイヤーはマズローの言うところの(1)と(2)で頭はいっぱいなのだ。
戦いたい、勝ちたい、経験値とお金を稼ぎたい、武器や防具をそろえたい。
これはゲーム内での欲求。

ゲームの外の世界でも、同じ欲求が働いている。
友だちよりも早くゲームを進めたい、学校に行ったら自慢したい。なかには、早くゲームを解き終えて中古相場が高いうちに売りたいという欲求を持つプレイヤーもいるだろう。

これらは、生存欲求と安全欲求に属す。

なのに……ゲームシナリオは、なかなか戦いをさせてくれずに、他者から感謝され自己実現をする方向へと物語は進んでいく。そのシンボルが、「星のオーラ」だ。

『ドラクエ9』の導入部分は、プレイヤーの欲求の階層と、ゲームシナリオが示した欲求の階層が一致してしない。このことは、私がプレイヤーとして本能で、深層心理で感じた、違和感であった。

(つづく)

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