Hisakazu Hirabayashi * Official Blog心理学で分析する『ドラゴンクエストⅨ』(2)

心理学で分析する『ドラゴンクエストⅨ』(2)

つづきです。
ドラゴンクエストにおける生存欲求は、どのようにすると満たされるのか?

プレイヤーたちは知っている。
……というかカラダにしみ込んでいる。

それは過去のドラゴンクエストシリーズがはじまったときから踏襲されてきた一種の決め事だった。
また、ドラゴンクエストの源流でもある『ウィザードリィ』へのオマージュ(仏:hommage=過去作品への尊敬の念)も込められていた。
そして、それはロールプレイングゲームに共通した文法と言ってもよいだろう。

ドラゴンクエストの世界の中で生きていくための最低条件は、2つの場所のありかを常に認知しておくこと。これを知っているかどうかで、プレイヤーの分身のゲーム内での生死は決まる。

難しい書き出しをしてしまったが、重要なのは宿屋と教会だ。
宿屋は傷ついたカラダを癒す場所。
教会はプレイデータをセーブする場所。

『ドラクエ9』の導入部分は、宿屋と教会の役割がはっきりとしない。
看板にはINNと書いてあるのに宿屋の機能を果たしていない場面がある。
これではプレイヤーは、どこで体力を回復させたらよいのか不安感を持ってしまう。

また、これは『ドラクエ9』の開発者の問題ではなく、キリスト教についてのさまざまな考え方を持った人の圧力からそうなった可能性が高いと思われるが、教会なのにそのシンボルが十字架ではない。

ドラゴンクエストといえば、教会がある場所の目印は十字架だった。
だが、プレイステーション2のリメイク版あたりから、十字架を使わなくなった

……というような事情も相まって、プレイ時間にして5分~10分のことなのだが『ドラクエ9』の導入部分は、プレイヤーに不安感を与え、心証を悪くしてしまったのではないか類推する。

第一印象というのは大事で、その後の印象にも尾を引く、とよく言われる。
ある対象にいだいた最初の感情や判断は、なかなか変わりにくい。

心理学用語では、このことを初頭効果という。

初頭効果といえば、『ドラゴンクエストⅢ』の勇者=主人公の実家で待つ母親は、見事な初頭効果をプレイヤーに与えていた。

まさに宿屋は大事だ。プレイヤーが足繁く通う場所だ。
宿屋に泊まるとG=お金を払わなくてはいけないのだが……
ところが、母が住む生家で泊まれば、宿代を払わなくてすむ。
そういう設計になっていた。

ゲームプレイの前半、宿屋に泊まらず実家に帰ることを繰り返していくうちに、母への愛情、家族の大切さがプレイヤーの記憶にすり込まれていく。

こうして植えつけられた「母は優しい。その母が愛した父は強い」という初頭効果があるからこそ、『ドラゴンクエストⅢ』の主人公とオルテガと対面は、感動的な場面として、ゲームの歴史に名を残すことになったのだろう。

(つづく)

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