名プロデューサーは豹変する
- Day:2009.07.24 15:09
- Cat:働く
だが、今日、プロジェクトの構成員がどれだけ仕事をして、全体の作業量の何%をこなしたか? を計算するのがプロデューサーの仕事ではない。
プロデューサーの大切なスケジュール管理とは……あえて過激に決めつけてしまおう。
モノづくりの工程を、前半戦と後半戦の真っ二つに分けることだ。
そこに独特な感性と決断力が求められる。
いきなり何を?
と思われる方が多いと思うので、詳しく説明しよう。
モノづくりの前半とは、自由闊達がいいのだ。
「こんなアイデアはどう?」
「私、昔からネタを持っていたんですけど……」
作り手の意見を止めない。止めないどころかドンドンと引き出す。
専門用語で言うと、クリエイター・オリエンテッド(Creator oriented=作り手志向)を心がける。モノづくりの出だしで、作り手の意欲が燃えずして、どうして良いモノができよう? スタートダッシュは肝心なのだ。
作り手が自由に意見を出せない場合もある。ゲーム業界やIT業界の俗語で言うと、「やらされ仕事」というのもある。であるならば、そのチームに蔓延する「やらされ感」を排除していくのが、プロデューサーの重要な役割だ。
たとえ「やらされ仕事」であったとしても、そこに作り手の創意工夫の余地は無いのか。絶対あるはずだ。その意気込みを引き出して、率いるメンバーのマインドを鼓舞していかなくてはならない。
「ゴリラの鼻くそ!」
「お、それはおもしろいじゃないか!」
発案に対して否定意見はなく、新しい案が、また新しい案を生む。
こういうリズム、テンポを生むのが、の前半戦の鍵である。
作り手は、クリエイターというくらいで、モノを生む神様のような存在だ。
神の意志を尊重しなくていけない。
作り手=性善説を信じる者になりきるのが、プロデューサーの仕事だ。
話は急転直下、変わる。
ところが、作り手は概してわがままという側面も持つ。
顧客ニーズよりも自己表現欲求が強い。
そして、締め切りがないとサボるし、あまりに自分の作業に没頭しすぎて、周囲が見えなくなることが往々にある。
こういう気配が感じられたなら、後半戦が訪れているサインだ。
後半戦は前半戦の正反対である。
クリエイター・オリエンテッド(Creator oriented=作り手志向)をやめる。
カスタマー・オリエンテッド(Customer oriented=顧客志向)に切り替える。
アイデアをつけるのではなく、むしろ削る方向でシェイプアップしていく。
作り手=性善説は捨てる。心を鬼にして、作り手=性悪説に思考を変える。
名プロデューサーは君子でなければならず、豹変が仕事なのだ。
この重大なターニングポイントは、モノづくりの過程において必ずやってくる。
便宜上、前半戦・後半戦と書いたが、これは45分ハーフのサッカーの試合のように、全製作工程の時間を2等分するという意味ではない。
創作物の完成度、組織に流れる空気などを解読して2等分するのだ。
なので、前半戦が10か月間、後半戦が2か月間ということもありえる。
この時の流れの読解力と判断力こそが、プロデューサーがなすべき、本当の意味でのスケジュール管理だろう。
しかし、プロデューサー育成を唱える教育現場では、作業項目を並べてマニュアルのようにして教えているのが実態だ。
(この話をしていくと延々と続きそうなので中締め、とします)