Hisakazu Hirabayashi * Official Blog男は女らしく、女は男らしくの電子メール

男は女らしく、女は男らしくの電子メール

  • Day:2009.08.26 00:30
  • Cat:言葉
どうしたことか、一昨日、昨日とメールの書き方について検索されて、このサイトにいらっしゃる方が多いようだ。

「メール 注意点」「メール 敬語」「電子メール 御礼」「ビジネス メール 書き方」「了解です メール」のような検索語の組み合わせが急に増えた。

昔、こんなことこんなことを書いたことがあったが、突然の出来事に少々、戸惑っている。

でも、なぜかそういうめぐり合わせのようなので、メールについて書いてみたい。

と、言いだしたものの、私はいただいたメールの返信が遅いときが往々にしてあるし、そこで使っている用語・用例・用法が、きちんとしたビジネスマナーに沿っているとは言いきれない。なので、正しいメールの書き方はこれだ! などと偉そうなことは言えないが、好きなメールというのがある。

それは男性なのに女性のようなメールである。
繊細で、心配りがあって、ちょっとロマンティック。

たとえば、ある男性にその方の仕事ぶりの素晴らしさを私が書いたら、その返信に「このメールは10年後の自分に読ませてあげたい」……なんて書いてくださったことがあって、この文章に、どんな御礼の言葉よりも重みを感じたことがあった。

逆もまた真なりで、女性なのに男性のようなメールを書く人が好きだ。
用件がまとまって、堂々と主張していて、迷いがない。そんなメール。

私がたまにメールのやり取りをする女性で、ビジネスメールなのに「ね」をつける人がいる。

よろしくお願い申し上げます
お待ちしています
さすがに顔文字は使われていないが、「ね」ははずしたほうがいいと思う。

ようは、私の文体の好みを言っているのかもしれない。
太宰治という男性は、女性的な文章を書いたら……右に出る者はいない(ああ、自分が嫌になるほど陳腐な表現だ)。そして、塩野七生の贅肉を削ぎ落としたような(ああ、これも紋切り型だ)文体が好きだ。

とにかく、しかし、そんな大笑いをして、すまされる事件ではございませんでしたので、私も考え、その夜お二人に向って、それでは私が何とかしてこの後始末をする事に致しますから、警察沙汰にするのは、もう一日お待ちになって下さいまし、明日そちらさまへ、私のほうからお伺い致します、と申し上げまして、その中野のお店の場所をくわしく聞き、無理にお二人にご承諾をねがいまして、その夜はそのままでひとまず引きとっていただき、それから、寒い六畳間のまんなかに、ひとり坐って物案じいたしましたが、べつだん何のいい工夫も思い浮びませんでしたので、立って羽織を脱いで、坊やの寝ている蒲団(ふとん)にもぐり、坊やの頭を撫(な)でながら、いつまでも、いつまで経っても、夜が明けなければいい、と思いました。

-太宰治『ヴィヨンの妻』より

優しくあれるようになるのは人生には不可能なこともある、とわかった年からである。自分でも他者でも、限界があることを知りそれでもなお全力をつくすのが人間とわかれば人は自然に優しくなる。

-塩野七生『男たちへ』より

自分でも説明がつかない。
とにかく私は、男性が女性的な文章を書くと、尊敬してしまう。
逆に、男性らしい文章を、女性が書いても、尊敬してしまう。
どうやら、そういう性癖があるらしい。

全然、「メールの書き方」になっていない。
私の文章の好みについての話になってしまった。

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