Hisakazu Hirabayashi * Official Blog『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ』が公開

『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ』が公開

『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ』が公開される。本日、観に行く予定だ。 太宰治の原作は、デカダンスの香りが漂う、破滅志向が強い文学だ。『ヴィヨンの妻』をはじめて読んだのは、中学2年の時だったが、次の描写が今でも記憶に残っている。

そうしてこの子は、しょっちゅう、おなかをこわしたり、熱を出したり、夫は殆ど家に落ちついている事は無く、子供の事など何と思っているのやら、坊やが熱を出しまして、と私が言っても、あ、そう、お医者に連れて行ったらいいでしょう、と言って、いそがしげに二重廻しを羽織ってどこかへ出掛けてしまいます。お医者に連れて行きたくっても、お金も何も無いのですから、私は坊やに添寝して、坊やの頭を黙って撫(な)でてやっているより他は無いのでございます。

という不憫さと気丈さが混在する妻と、

いきなり百円紙幣を一枚出して、いやその頃はまだ百円と言えば大金でした、いまの二、三千円にも、それ以上にも当る大金でした、それを無理矢理、私の手に握らせて、たのむ、と言って、気弱そうに笑うのです。(-中略-)私ども夫婦が何かと話しかけても、ただはにかむように笑って、うん、うん、とあいまいに首肯き、突然、何時(なんじ)ですか、と時間をたずねて立ち上り、お釣を、と私が言いますと、いや、いい、と言い、それは困ります、と私が強く言いましたら、にやっと笑って、それではこの次まであずかって置いて下さい、また来ます、と言って帰りましたが、奥さん、私どもがあのひとからお金をいただいたのは、あとにもさきにも、ただこの時いちど切り、それからはもう、なんだかんだとごまかして、三年間、一銭のお金も払わずに、私どものお酒をほとんどひとりで、飲みほしてしまったのだから、呆れるじゃありませんか」

と、言われるような無頼で酒好きな夫が登場する。社会に適合できない詩人として。だが、映画では、この太宰文学をベースにしながらも、ぬくもりのある夫婦愛を描いているようだ。どのような脚色がされているのか、今から楽しみだ。



引用ばかりになるが、木村綾子さんが書いているサポーターズ・ブログもおもしろい。
公開前日には、太宰治のこんなエピソードも披瀝されている。

生前太宰が、映画について雑誌記者からのインタビューを受けたときのこと。彼はこんなことを語っていました。「日本人は、誠実、真面目、そんなものにだまされやすいんだ。大切なのは、どう“軽薄”であるか、なんだよ」。そして芭蕉の“かるみ”を引き合いに出し、その“かるみ”が身についた役者として、15代市村羽左衛門と高田浩吉、そしてルイ・ジュヴェを贔屓にしていることを打ち明けたそうです。

この映画はモントリオール世界映画祭で根岸吉太郎監督が最優秀監督賞を受賞しているが、そうした外の評価ではなく、私は私の内面で何を観じるのかを、まっさらな心で探求したい。

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