Hisakazu Hirabayashi * Official Blogtorne(トルネ)は突発的なできごとではない

torne(トルネ)は突発的なできごとではない

昨日の午後のこと。

ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)は、ホームエンタテインメントシステムとしての「プレイステーション3」の魅力をさらに拡げる専用周辺機器として、地上デジタルチューナーと視聴・録画アプリケーションをセットにしたPS3R専用地上デジタルレコーダーキット『torne(トルネ)』を、希望小売価格9,980円(税込)にて2010年3月より発売いたします。

との発表があった。
専用サイトもオープンした。以後、ニュースサイトで続々報道され、2ch掲示板やTwitterなどのネットワークメディアを通じて、この報は一気に広まった。

私の感想はというと、まったくもって冷静だった。
驚くことでもなんでもない。

この日がやってくることは、約17年前に予測がついていた。ソニー株式会社は、プレイステーションを発売することを決めた。と、同時に同機はソニー本体ではなく、新会社を設立して発売することになった。その企業の名前は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)だった。プレイステーションはゲーム機だったが、社名はソニー・ゲームズではなかった。プレイステーションの将来像が、ゲーム機ではないことは明白だった。この予測は、ソニー銀行が銀行業務をやることを想像するくらいに簡単なことだ。

さらに、である。

プレイステーションの発売の前週に、日本工業新聞の記事を書くために、私はソニー・コンピュータエンタテインメントを訪問して取材している。当時、広報責任者だった佐伯雅司プロモーション企画部次長(肩書きは当時/以下インタビュー記事も)が対応してくださり、次のように答えている。

佐伯 ソニーがやりたかったのはデジタル映像のシンセサイズです。テレビ番組『進め!電波少年』をご存じですか? あのリアルタイムCGはソニーの「システムG」という技術によって開発されています。この技術を家庭で再現し、エンタテインメントに応用したいと考えたのです。その技術者が、現在SCEの開発担当取締役をしている久多良木健であり、生まれた製品が今週発売するプレイステーションというわけです。プレイステーションのことを「3D表現がすぐれたゲーム機」とおっしゃる方がいます。けど、メーカーサイドの思い入れを言わせてもらえば、あれは「家庭向けエンタテインメント用のデジタル映像のシンセサイザー」なんです。

平林 「デジタル映像のシンセサイズ」という発想からプレイステーションは設計された点についてはわかりました。ではその後、SCEが設立するまでの経緯は? どうしてソニーグループが次世代ゲーム機を発売するようになったのか、興味があります。

佐伯 久多良木(SCE取締役)の発想――。デジタル映像のシンセサイズというのが、ハード側の発想だとすれば、ソフト側にも同じようなことを考えている人がいました。その代表的な人物が、当時はソニー・ミュージックエンタテインメントにおり、現在はSCEの副社長である丸山茂雄でした。ハード同様、ソフトもデジタル化の流れは急速に進んでいる。たとえば、レコードをつくる際にフルオーケストラをスタジオに招いていたのが、シンセサイザーの登場でガラッと変わったのです。今、スタジオと呼んでいるのは、コンピュータールームに等しいんですね。そんな変わり様を目の当たりに見てきた丸山たちは、「これからのエンタテインメント・ソフトはデジタルにある」ことを、大いに確信していたわけです。




上の動画はインタビュー中に出てくる、『進め!電波少年』の一場面。背景のCGと実写の合成、またその変形や映像効果(エフェクト)をリアルタイムに制御しているのが放送機器「システムG」だった。

なお、このインタビューは現・静岡大学情報学部の赤尾晃一准教授と共著の書籍『ゲームの大學』、195ページに収録されている。

ともあれ、この設立経緯からもわかるように、ソニー・コンピュータエンタテインメントの創業時の幹部たちは、ゲームを軽視しているわけではない。むしろ、ゲームを重視して市場参入したわけだが、その先を見ていたことは確かなのである。

もう少し、時間を進めよう。

そのプレイステーションが日本国内だけでも2000万台売れるほどの大成功を収めた。
後継機種、プレイステーション2を発売するにあたって、当時の久多良木社長は下写真を使ったプレゼンテーションを行った。場所は都内のホテル、99年9月のことだった。
The PlayStation Visionと題してプレイステーションビジネスの長期戦略が語られ、この場でも明確に、Networked Digital Entertainmentを目指すと宣言されている。

psvision.jpg

プレイステーション2を持っている人は多いだろう。
もし、ゲームソフトを挿入しないで起動するとどんな画面が現れたか?
黒い画面をバックに「ブラウザ」との表示がされるはずだ。けっして「ゲームディスクが挿入されていません」といったエラーメッセージは出なかった。すなわち、プレイステーション2の設計段階からして、パッケージソフトに頼らない、Networked Digital Entertainment市場の拡大を狙っていたのである。

くどくなるが、もう一枚の写真。
これはプレイステーション3が発売される前年の2005年のE3で公開された。

2005e3.jpg

Super Computer
for Computer Entertainment.


と、プレイステーション3のコンセプトが晴れがましく発表されている。
この場でも、「すごいゲーム機をつくりますよ」と、ゲーム機に限定したプレゼンテーションをしていない。
もちろんゲームソフトが作動するマシンをつくったが、その用途は、はるか先を見ている。

私は何を言いたいか。
『torne(トルネ)』は驚くことでもなんでもない。
ソニー・ゲームズではなく、ソニー・コンピュータエンタテインメントと呼ばれる会社が、ようやく出すべくして出すことになった製品が、昨日発表されたのだと思う。『torne(トルネ)』はどんな歴史の延長線上にあるものか、念入りに語ったが、まったく各論に入っていない。

これではあまりにも締まらないので、簡潔な感想を述べる。
『torne(トルネ)』のビジネスは成功するだろう。

(つづく)

Comment

でもさ
PSXという「黒歴史」を無視して,『torne』を語れないよね。

ただ,今回は,あくまでもPS3の拡張ということだし,
PS3にUSBでHDDを増設できるあたりがキモかな。

もっとも,PSPユーザー以外にどれだけ広がりがもてるかは疑問。
「Blue-rayにダビングする」というユーザーがどれだけいるかも現時点では未知数。
  • 2010/01/15 05:39
  • あかお
  • URL
  • Edit
>>あかお
突っ込みどころが多すぎるんですが。

・PSXの失敗は本体買い換えないと使えなかった。
 さらに非常に高価だった。
・Blue-ray→Blu-ray
・「ブルーレイにダビング」→トルネでは出来ない。

もうちょっと調べてからケチつけましょうよ。
  • 2010/01/15 10:58
  • PICK
  • URL
また言い出した(苦笑
PS3はゲーム機ではない?
また久多良木さんと同じことを言い出した(苦笑

価格に制限のあるゲーム機で、やれる事には
限度があります。例えばこのトルネだって
映像編集も出来ないし、BD転送だって出来ない。

家庭用サーバーとしての機能なら、ゲーム機じゃなく
価格に制約のないTVに持たせるべきでしょう。
操作性的にも、機能的にも、この方が遥かに充実した
商品ができます。

はっきりいって、ゲーム機で音楽聞く人や、動画見る人や、ブラウザでネットする人なんて、そうは
居ません。
そもそもゲーム以外の各種操作するのに、
ゲーム機とTVの両方の電源つけるとか・・・
面倒くさくて問題外。

ゲーム機に余分な機能付けるより、子供が
分かりやすいように極限までシンプルにして下さい。
繰り返しますが、ソニーが家庭用サーバー作るなら
それはゲーム機じゃなく、TVであるべきです。
アップルのIMACに匹敵するような商品を、
TVで出して下さいよ。
  • 2010/01/17 19:51
  • 通りすがり
  • URL
  • Edit
痛々しいレスですね…
>それはゲーム機じゃなく、TVであるべきです。

はっきり言ってこの様な意見をしている方は本当に迷惑な方です
こんな人が家電業界にいたら家電の進化なしですね
「デジカメに携帯電話機能を追加してください」と言っているみたいです
TVは省エネと低価格で勝負をしているのに現状を全く理解できていない
この様な輩は不愉快極まりないです。
  • 2010/01/18 11:58
  • ran
  • URL
ふむむ
結局のところ、オブジェクト指向になっていくのでしょうか‥?

PS3がメディアハブとなっていくのが先にあるのかなあ。。どちらかというとPCに近くなって行きそうな流れにも見えます。

TVはシンプルに映像機器として、ディスプレイよりになっていき、ユーザーはPS3をメディアハブとしてトルネのような自分にとって必要なパーツを簡単に追加できるようになっていくというのがビジョンなのかなあと想像しますが。それもちょっと違うのでしょうか…

コンテンツとしては、放送とデータ通信の融合が現状でもすこしずつ進んでいるようですが、もっとダイレクトにシームレスに連携するようなものが出てくると面白いかもしれませんね。

ただ、その動きを押しとどめるような動きが他メーカーから出てきそうな気もします。
  • 2010/01/19 11:29
  • かずみ
  • URL
  • Edit
すきまねらいって感じでしょうか。
地デジじゃないサブのTVでゲームと録画ができる。便利。って感じに思えます。
  • 2010/01/20 22:28
  • ふむふむ
  • URL
PS3をグレードアップしていける、という概念でいいのでは。
ゲームとしての性能のみを求める方はトルネ買わなきゃいいわけですし。
やみくもになんでも初期からついてたりとかすると、
かえってユーザーが限定されてきそうです。

PSPユーザーのニーズを見てもわかります。
ゲームしたいだけの人から、ネットをしたりリモコンにしたりする人まで様々。
PS3は自分らしい使い方を探していける良い機器だと思います。
たまたま間口がゲームなだけ、といった感じでしょうか?
  • 2010/02/07 16:26
  • 普通にいいかと。
  • URL
  • Edit
> PS3は自分らしい使い方を探していける良い機器だと思います。
> たまたま間口がゲームなだけ、といった感じでしょうか?

まさにそうだと思います。

あと本当どうでもいいことなんですが、
我が家でPS3は万能なメディアプレイヤー
という位置づけになりそうです^^;
  • 2010/03/16 23:59
  • PS3に好きなパーツをつける感覚かな
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