Hisakazu Hirabayashi * Official Blogいつも絶好調で悩みなきアスリートはいない

いつも絶好調で悩みなきアスリートはいない

上記の新刊のお知らせを、本日も更新いたしました。

JBOOKの書籍コーナー、および予約ページのリンクを画面左のinformationで追加。また、右タブをクリックすると表示される「本文より」の項目も追加しております。

「本文より」は文字数の関係で長い箇所を掲載できませんが、同書には、こんな箇所があります。
ノンフィクション作家・山際淳二さんの文章を、引用させていただいております。時代は古くなりますが、ロッテオリオンズ(当時)のエース、村田兆治が悶々とする姿が描かれています。

夜、眠れない。
不安が心のなかでとぐろを巻いている。
焦りがある。
落ち着かない。
そんな状態を長くつづけていたら気が狂うのではないかとさえ思った。
自分のベストのピッチングをしていたときのことは、自分が一番よく知っている。
体の切れ、球速、コントロール。
すべてが完璧だった。
そこに戻らなければならない。
しかし、現実にはキャッチボールも満足にできないのだ。
暗闇にロウソクを一本、立てる。
炎をじっとみつめて過ごす。
乱れに乱れる心を静めるためだ。
夜、流れ星を見つける。
星が流れたとき、祈る。
あるいは滝に打たれる。
以前だったら、とてもそんなことはできなかった。
ロウソクの炎を見つめていたら、ものの五分でうんざりしてしまっただろう。
バカバカしくって、滝に打たれてなんか、いられなかったはずだ。
しかし、そうでもしなければ落ち着かないことがあることをその時期に、彼は知った。
村田には、過去十数年のうちに築いたものがあった。
それを崩壊させてしまいたくなかった。

今、バンクーバー・オリンピックが開催されています。
毎日、日本人選手のメダル獲得が期待され、報道ではどんな選手も「練習も万全、現地に入って絶好調」と伝えられています。あの、どんな選手も絶好調と伝えられる報道は、報道ともいえない、視聴者がチャンネルを切りかえないための番組宣伝のようです。

これは断じてもよいと思うのですが、スポーツを始めて挫折を知らず、スランプを経験せず、自分には才能がないのかと悩むこともなく、負けた経験がない……そんな選手はいないはずです。そこに、オリンピック特有の重圧がかかるのです。そうやすやすと、選手を万全や絶好調にはさせてくれません。

オリンピックに出場できるスーパーアスリート。天才少年、天才少女たちは、けっして報道されない、自らも語らない苦悩を、山ほど抱え込んでいる。浅田真央選手も、安藤美姫選手も、高橋大輔選手も、国母和宏選手も、それぞれに「暗闇にロウソクを一本、立てる。炎をじっとみつめて過ごす」と同じ目的の行為をしているに違いありません。

大きな魂ほど、大きく悩む……のが人間だと思いますから。

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