Hisakazu Hirabayashi * Official Blogゲーム業界版・不都合な真実(2)

ゲーム業界版・不都合な真実(2)

昨日のエントリーのつづきです。
「ゲーム業界版・不都合な真実」を書くためには、私の仕事の説明をしなくてはなりません。
私は物書きの仕事をするほか、いわゆる経営コンサルタントの仕事をしています。

経営コンサルタントというと、どんなイメージをお持ちですか?
「いかがわしい!」。
はい、その通りです。よく「経営コンサルタントと名乗る男」が詐欺事件などを起こして捕まったりしています。
「楽で儲かりそう!」。
これも、当たりです。
経営者にアドバイスをするだけでフィーがもらえるのですから、いい商売です。

ともすれば、いかがわしくて、楽をして儲けていそうな仕事。
それが、経営コンサルタントであることを、自覚しているくせに、それを生業(なりわい)にしている私は、なるべく現場、現場に近いところで働くように心がけてきました。

いや、大手コンサルティング会社、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループを率いているわけでもない私は、現場で働くのが、ちょうどいい役所(やくどころ)だったのかもしれません。

ともあれ……私は経営コンサルタントを名乗っていますが、この職業名にはかなりの抵抗感があり、その代償行為として、世間がイメージしているよりも、はるかに現場密着型の仕事をしてきた(つもり)、とご理解ください。

具体的にどんなことをするのか。
昨日のつづきですから、90年代のことは割愛します。
90年代は、イケイケドンドンの時代したから、現場のスタッフたちと、攻めていけばよかった。
そして、たいていのことは成功した。以上、です。

しかし、2000年を過ぎると日本国内のゲームソフト市場規模は急激に縮小します。
私の夢のようだった「ゲームの時代」は終わるは幸か不幸か、的中してしまったのです。
99年、4851億円あったソフト市場は、03年には3091億円まで落ち込みました。(下図参照)

market.jpg

このような2000年代の前半、ゲームソフト製作の現場は壊滅的なダメージをこうむるわけですが、私が現場でやったことは立て直し、でした。

会社そのもの存続が危うくなっている場合は、会社再建を丸ごと引きうけ、現場に机を置いて、毎日出社したこともありました。そこまで規模は大きくなくても、10数名規模のプロジェクトを立て直す、あるいは不採算と判断すれば中止の決定をくだす、というようなことを、何度となく積み重ねてきました。

こうして現場に身を置いてみると……昨日の話のつづきです。
私の身の回りに、続々と体調不良を訴える人が出てくるようになるのです。

頭痛がする、朝起きられない、動悸がする、手が震える、肌が荒れる、ひどい肩こりがする。
訴える内容は「体調」のことですが、当時必死になって臨床心理学を学んだ私は、それが過度のストレスにかかわっている=心因性であることが推定できます。

しかし、医師ではない私は、治療行為などはできない。
むしろ、そんなことを行ってはいけない。
心の病は、専門医にまかせるのが鉄則で、私は体調不良を訴える社員たちを、精神科、または心療内科に行って診断することをすすめることを、ほぼ月に1度くらいのペースで行っていました。

私は「心因性であることが推定できます」と書きましたが、その推定でさえ他者に押しつけることは危険な行為です。素人の私が診断してしまえば、法により罰せられます。したがって、私の推定は間違っていないか。症状を克明にメモし、専門医を訪問し確かめに行く。そのうえで、推定がほぼ確からしいと判断したときのみ、本人に伝達することを自分自身のシバリにしてきました。

こうして、調べて、確認して、説得して、治療を受けてくれるのならば早期治療がほどこされたことになります。
難儀だったのは「私は心を病んでいるわけではない」と主張する人がいることです。
こういうケースは、無理に説得するのは得策ではなく、家族の同意や協力が必要です。たとえ本人が拒んでいたとしても、症例によっては、家族とともに治療してもらうことが必要とされています。

ご家族に事情をご説明するために、関東近県の各地、北海道や和歌山県にも足を運びました。どこの馬の骨だかわからない男=私から、いきなり電話があり「おたくのご子息のことでお話がございます」と告げられ、東京から初対面の人物がやってくるわけです。この対面がはじまるまえ、親御さんたちが一様に浮かべる不安に満ちた顔は、忘れようにも忘れられません。

開発現場に飛び込む経営コンサルタントは、このような仕事をしていたわけですが、仕事を離れてプライベートの時間でも、相談事をされます。

たとえば、世間でいうところの有名ゲームクリエイターと会食をしたとします。
すると、私のブログの読者の方ならば、全員が知っているようなヒット作をつくった人物が、自分が心の病にかかったことを語るのです。なかには「平林さん、ボクは朝起きるたびに死ぬことを考えてるんです」と告白する人もいました。嗚呼、そんな人たちの人数をかぞえたくもありませんが、けっしてまれなケースではない……ということを理解していただく意味で申し上げましょう。その数は、両手では数え切れないほどです。

いや、私がここで妙に話をぼやかさなくても、ゲーム業界にいる人ならば噂は伝わっているでしょう。
なかには、自身のブログやmixiの日記などで、病気のことを書いている人もいます。

ですから、私はけっしてこの場で衝撃的な事実を暴露したわけでもありません。
まさに、今日書いたことは「ゲーム業界版・不都合な真実」であり、論じることさえ封印されていただけ……だと思っています。上で述べたことは、ゲーム業界に身を置く人にとって、珍しくない出来事かもしれないのです。

そんな経験をしてきたので、私は何かをしたかったのであります。

(つづく)

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