Hisakazu Hirabayashi * Official Blogソニー、グーグルと提携は、「バトルロイヤル時代」の象徴

ソニー、グーグルと提携は、「バトルロイヤル時代」の象徴

夕べは早寝をしました。
目が覚めたら、ソニー、グーグルと提携と書かれた新聞が届いていました。
驚きませんでした。

上の文章の3行目。
「ビックリしました」と続くことを、新聞記者さんは期待をして1面トップのニュースにしたのでしょうけど、私は驚きませんでした。

私はこの数年間、「業界再編の時代は終わった。これからは天地創造にも似た、企業と企業の組み合わせが誕生するだろう」と公言してきました。ですから、いかにも起きそうなことが起きた、と思うだけでした。

午前中、この件に関する取材のお電話を2件いただきました。
ひとつは、軟らかいエンタテインメント系の雑誌で、もうひとつは、硬派なビジネス誌です。記者の方に私は、こう答えました。

軟らかい雑誌の方には……プロレスを比喩にして話をしました。


「いきなりプロレスの話をして恐縮ですが、時代は、1対1のシングルマッチ、2対2のダッグマッチではなくなってきている。今、そしてこれから何年もかけて起きるのは、誰が敵で、誰が味方かわからない『バトルロイヤル』だと思っています」。

「1対1の時代……わかりやすい例をあげれば『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』はライバル同士でした。敵と味方になって、シングルマッチをやっていました。ところが、その2社が一緒になって、スクウェア・エニックスになりました。他にも、バンダイナムコが、セガサミーが、コーエーテクモが、タカラトミーも生まれました」。

「企業統合と提携は違うじゃないか! というツッコミはなしでお願いします(笑)。意味は、ほぼ同じだと思うので、もう少し聞いてください。ともあれ、業界再編の時代は一巡した、と思っています」。

「今は、さらに一歩進んで、業界内だけの組み合わせでは、良い製品やサービスはつくれない。もっと、なまなましく言うと、業界や国境の枠など飛び越えて、コンビを組まないと生き残れない。逆に名コンビが生まれれば、すごい化学反応が起きるかもしれない。そういう時代がすでに来ています」。

「2010年5月現在、ハイテクビジネスのリングでは、アップルという名のレスラーが大暴れしています。iPodが売れている、iPhoneが売れている。製品だけが強いだけではなく、ネットワーク上での販売網やOSまで抑えそうな勢いです」。

「そんな時に、リング上でパッと目があったのは、ソニーという名のレスラーと、グーグルという名のレスラーで、一緒に組もうぜと阿吽(あうん)の呼吸でタッグが結成された。そんなプロレスのリングを連想してもらうとわかりやすいかと思います」。

バトルロイヤルネタ。
じつは講演の際に、しばしば使っていたので写真もあります。
battle.jpg

こんな話を糸口に、いろいろとお話をしました。
硬派なビジネス誌の記者の方には、同じことを、ちょっと背伸びして難しい用語を使って話しました。


「今回の提携をメタ視点から見ると、業界という概念がなくなる……と私は数年前から言っているのですが、その典型のような事象だととらえています」。

「どんな大企業も、創業時に『さあ、業界をつくろう』などとは考えていない。ただ、目の前に、発明品のような素晴らしい製品やサービスがある。売れそうなので売った。フタを開けてみたら、予想通りによく売れた。すると、同じような製品、改良品を売る企業が複数社、出てくる。それが束になると、いつのまにか『業界』が、できてしまうのです」。

「鉄鋼業界、繊維業界、自動車業界、家電業界、百貨店業界、食品業界、不動産業界、建設業界……こういうトラディショナル業界の呼び方をトレースするようにして、新しい業界が次々と誕生しました。コンピュータ業界、ソフトウェア業界、ゲーム業界、アミューズメント業界、IT業界、インターネット・カフェ(複合カフェ)業界……」。

「便宜上、業界でくくることは、あってもいいと思います。いや、業界でくくるメリットはいくらでもあります。業界でくくっているから、『繊維業界と百貨店業界の売上の相関関係』などを、調べて分析することができます」

「ですが、業界でくくることは境界線の外側から見るうえでは、この上なく便利なのですが、その業界に帰属する企業にとって、また、そこで働く人にとって、思考を硬直化させてしまう、というデメリットがあるとも考えています」

「学生は入社するときから、○○業界を目指します。めでたく入社します。そこで働くことになったら、○○業界には、いかにもその業界らしい法的規制や、明文化されていないけれども守らなくてはいけない掟が存在するものです。さらに、こういうモノをつくらなくてはいけない、こういう売り方をしなくてはいけない、といった、働き方にも一種の定形(パターン)があります」

「このパターンを繰り返すうちに、不必要な仕事の癖がつくことになり、思考の硬直が起こり、企業も個人も、時代の変化に対応できない、というようなことが往々にしておきます」。

「今回の提携の仮想敵がアップルであることは、容易に想像できます。アップルは、パーソナルコンピュータ業界を興した会社ですが、業界にしばられませんでした。厳密に言えば、2000年代になって、業界の呪縛が解けて、携帯端末、通信機器、オンラインストアを立て続けに成功させて……いわば『アップル業界』をつくることに成功したのです」。

「アップルには何ができるのか。硬直していない柔軟な発想で、企業が持っている因子を分解する。顧客はどの因子を求めているかを考察する。そのマッチングを行う。足りないものがあれば、付け加える。業界でものを考えないということは、因子でものを考えると同じ意味だと私はとらえています」。

「現在のアップルが成功しているから、ソニーもグーグルも真似をした……では期待はずれです。『YouTubeが見られるテレビです』と言われたら、かえって興ざめします。アップルが例示した業界の壁、破壊モデル。既成概念にとらわれない……。この成功をソニーもグーグルも認めたうえで、真っ向勝負をしてほしい。アップルの製品やサービスは完璧か。コンテンツ・プロバイダーは皆、満足しているか。そういう検証をして、新時代にふさわしい事業モデルを提示してほしいです」

……とお答えをしました。

もちろん、以下、もろもろの各論についての質問をされ、回答申し上げました。
ですが、お伝えしたかった根底の部分は、誰が敵か、誰が味方かの区別がつかない「バトルロイヤルの時代に突入している」「業界の壁は破壊されていく」……ということにつきます。

関連する名言:
「ぼくは人類の職業分化に反対だ。絵描きは絵描き、学者は学者、靴屋は靴屋、役人は役人、というように職業の狭い枠のなかに入ってしまって、全人間的に生きようとしない、それが現代の虚しさなんだ」(岡本太郎)

Comment

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なるほどです。国境を越えて手を組む。今はそういう時代なんですね。とても勉強になります。
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