Hisakazu Hirabayashi * Official Blog銃とデザイン(ハードボイルド風味)

銃とデザイン(ハードボイルド風味)

場所はロスアンゼルスのダウンタウンだった。
The Los Angeles Gun Clubは、アメリカによくある射撃の練習場だ。

カウンターに行く。
身分証明書を見せる。
誓約書にサインをする。
レンタルする銃を選ぶ。
手続きの簡単さは、日本でボウリングやダーツをするのと変わらない。

俺は初めて本物の拳銃を手にした。
シングルアクションの38口径だった。
重かった。

その瞬間だった。
俺の身体は予想外の反応を示していた。
身体から汗が吹き出してきた。
冷や汗ではない。
スポーツをした後の汗とも違う。
今までの人生で、かいたことのない汗だった。
気味の悪い汗だ。

凶器。
人が人を殺せる道具を持ったとき、汗がにじみ出ることを俺は知った。

狭いブースに入った。
防音用の耳あてを装備した。
目の前には、ヒトのカタチをした標的がある。
中央をめがけて撃った。
一発目。
外れた。
驚くほどの反動が右肩に跳ね返ってきた。
二発目。
かろうじて標的に当たるが中心に命中とはいかない。

隣のブースには大男がいた。
大口径のライフルを撃っていた。
その男は小気味いいくらいに標的の中心を射抜いていた。

銃声が轟いた。
火薬の匂いもした。
実弾が飛びかっていた。
俺は戦場のような空間にいた。

銃を撃ちながら、時は過ぎていく。
ただ、ただ……俺は……汗をかいていた。

想像していた銃は、映画やドラマの小道具だった。
だが、本物の銃は、やはり人を殺傷する武器だった。

この初夏の夜、以降のことだ。
俺は銃を怯えるようになった。

銃のカタチをしているものが怖くなった。
ガンコン(ガン型コントローラ)でも怖かった。
たとえそれが、プラスチックでできた玩具だとわかっていても、だ。

俺はトリガーを引くコントローラの操作を避けていた。
あの夜のにじみ出るような汗の記憶がそうさせた。

変化は、突然訪れた。
トラウマが消えた。
数日前だ。

PlayStation Moveにシューティングアタッチメントを装着した。
恐怖心はなかった。
子どもが遊ぶ姿にも抵抗感がない。
不思議だった。

理由はわかっている。
先端部が「球」の形状をしているからだ。

実弾が飛び出そうな銃口と、光る「球」では心理的な印象は大きく違う。

理由はまだある。
シューティングアタッチメントの後部も丸みを帯びた形状になっている。
これも恐怖心をやわらげてくれる。

色は赤と白を使っている。
黒を使う箇所を極力少なくしている。
一度、銃に怯えた男が楽しんでトリガーがひけた。

ゲームをつくる人にスポットライトは当たる。
作者の名前は公開される。
アワードをもらえるチャンスもある。

だが、ゲームコントローラの……そのまた、アタッチメントをつくった人物は、生涯無名のままなのだろうか。

開発秘話をインタビューされることもない。
静かに次なるモノのデザインを、淡々とこなす人生を送るのか。

誰も撃たないなら、俺は静かに賞賛の弾丸を打ち込みたい。
標的は、シューティングアタッチメントのインダストリアル・デザイナーだ。

PlayStationMove シューティングアタッチメントPlayStationMove シューティングアタッチメント
(2010/10/21)
PlayStation 3

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